金利が当分あてにならないのなら、多少のリスクを覚悟してでも自らの運用を考えなければならない時代がきたのではないでしょうか。相場のプロが運用するといわれる投資信託でさえ、1割や2割の負けは当たり前ではないですか。人に運用を任せて負けるのであれば、同じリスクを自分でとった方がすっきりしませんか。最初から1割のリスクに限定して「マネー・マネジメント」を行い、「ストップ・オーダー」を確実に実行すれば、それ以上の負けが出るとは考えられません。
「勝つための投資術」の"おわりに"の一節である。
著者の新井さんは証券会社でリサーチ部門、投資顧問会でファンドマネージャー、商品先物取引会社で自己売買(ディーリング)、ファンド、為替業務を経験するなどマネー・ウォーズ(相場)の世界で多彩な経験を持つ。そしていま「わが家をディーリングルームに早変わりさせて」個人投資家兼著述業者である。
本書の題名は「勝つための投資術」だが、副題の「なぜ個人投資家は相場に負けるのか」とあるようにむしろ「負けないための投資術」を実体験を踏まえて伝授している。「私は先物・オプション取引が大好きです。正直なところ、先物取引をはじめてしまうと、個別銘柄(株式)で時間をかけてもうけようなどと考えることもなくなってしまいます」。著者はこう書いている。ゴム、トウモロコシ、小豆、パラジウムのチャートを掲げて、先物取引でのリスクマネージメントについては特に噛んで含めるほど丁寧に説明を加えている。
実は新井さんには本書が出る前に次のような相場指導をいただいた。
「チャートも見ないで相場を張るのはいかがなものか。チャートは素直に見れば、単純明快な相場の杖となる。一枚のローソク足を小学生に示してごらんなさい。上がるか下がるかずばり指摘できるはずです」。
あれから2カ月、新井さんの著書が店頭に出回っている。原稿の校正を手伝った時点ではわかりやすい説明で、初心者向きの解説書、という印象を持ったが、出来上がった本を改めて通読すると、むしろ私のように現在進行形で相場の世界にさまよっている層にとってこそ負けを大きくしないためになにをやるべきで、なにをやるべきではないかの道しるべになるという意味で必読の書といえよう。
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