長年相場にたずさわり、自分なりの相場哲学を持ってしまうと、どんな本も一長一短に思えて、あきたらなくなってしまうのは避けられないことだろう。先日読んだアメリカのファンドマネージャーの大御所の書いたものには「投資とは、詳細な分析に基づいたものであり、元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動を指す。そしてこの条件を満たさない売買を、投機的行動であるという」とあった。
私は投資とは運用資産を適当に配分して保有するものとし、投機は価格の鞘抜きを狙う売買だと定義している。両者の見極めは評価損に対する抵抗力である。値下がりを投資環境の改善と見なせるなら、それは投資である。
必ずしも満足が得られないにもかかわらず、さまざまな本を読むのは、脳に刺激を与えるためである。我々の脳は同
じ刺激だけ与えていると慣れてしまい、感動が鈍るだけでなく、働きそのものも低下するように思える。上の投資、投機の定義でさえ、私に十分な刺激を与えてくれた。
「新マーケットの魔術師」は相場を熟知した著者が、スーパートレーダーたちにインタビューをし、彼らの成功の秘訣を聞き出している。原著が書かれたのが92年なので、今頃は生き残ってはいないだろうなと思われるトレーダーもいる。非の打ち所がないようなすごいトレーダーもいる。著者の質問が鋭いので、それらのトレーダーの本質がえぐり出されているのだ。
この本は刺激的である。相場に関わる人には必須、そうでない人にもお勧めできる一冊である。
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