この本を初めて読んだのはシカゴ−日本の飛行機の中。私は飛行機の中で眠れない性質なので毎回時間を持て余すが、そのときはこの本のおかげで有意義に過ごすことが出来た。今回、おすすめの本用に読み返してみたが、相変わらずジム・ロジャーズの鋭さには感心してしまった。この本は、投資家ジム・ロジャーズが世界6大陸をバイクで旅した記録だが、国境と民族をめぐる洞察、そしてそれから推察する同地域の経済状況など、物の見方、投資の生きたテキストとなっている。
国家に頼らず自分達でやっていくという気概、そしてマーケットに対する信頼、これはアメリカ人に顕著なものであるが、ジム・ロジャーズはそれを体現しているようである。彼の物の見方は一貫しており、常に市場への揺るぎ無い信頼が感じられる。
当時(米国でのハードカバー初版は1994年:旅行は1990−1992年)ジム・ロジャーズが予測した「アメリカは売り(409ページ)」というのは、その後の米国の成長を見るとはずれたように見えるが、政府が改革を先送りする傾向にあるということは当たっている。今の日本がそうだ。本書では今後の日本を考える上でのヒントを至るところでみつけることが出来る。
なお、本書の投資関連の部分をまとめて作成された「徹底大予測21世紀<この国が買い、この国が売り>」を補足的にお勧めしておきたい。ただし書かれた年代を考えると、この本の内容を直接21世紀に適用してこの国は買い、売りというよりは、ジム・ロジャーズの基本的な考え方を学ぶつもりで読むほうが適しているだろう。
なお、この本の原著が「インベストメント・バイカー」というタイトルであると知ったとき、「インベストメント・バンカー」のもじりであることに気付いて思わずニヤリとしてしまった。
(SFS00-0190)
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