最近はご乱心ばかりが目立つアメリカだが、このあたりの著書に人材の厚みを感じ
る。本書は米国クリントン政権時の労働長官が、ニューエコノミーによって訪れる社
会・家族・個人の未来像を語ったもの。その内容はITバブルが崩壊した今でも、世界
中に押し寄せている変化を的確にとらえている。
要約すると、
- ニューエコノミーによって消費者は世界各国から、より良いものをより安い価格
で購入できるようになった。
- しかしそれは同時に、常に人件費の安い国と競争を迫られるということであり、
労働者あるいは経営者としては終わりのない競争に巻き込まれることを意味する。
- 人々はこれまで以上に懸命に働くことを余儀なくされ、学歴などによる階級が固
定化し、友人関係・家庭・地域社会はズタズタに縮小してゆく。
- 多くの人々は、この変化がなぜ起こったのかを理解することなく荒波に翻弄され
ている。我々はこの現象を見すえた上で「新しい社会バランス」を形成してゆくこと
が必要であろう。
雇用なき回復(ジョブレスリカバリー)と言われた90年代前半には、産業革命以来の
雇用形態と社会構造の変化に着目した「ジョブシフト」(ウィリアム・ブリッジズ)
という好著があったが、これはその流れを汲む傑作であろう。
マクロ投資戦略の大きな指針となるとともに、自分の社会的ポジショニングを再構築
する上でも必読の書。
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