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第23回 「円安バブル」崩壊への備えは?

2008/05/30

前回は、高金利目当てで安易に外貨投資をすることが危険であることをご説明 しました。外貨投資をするにあたり、筆者が考える注意点として、以下の2つ を挙げます。

1.通貨分散

まず、絶対条件として、「通貨分散」をすることです。
3月に1ドル=95円台にまで円高になりましたが、これは厳密には「円高」と 呼べるものではありませんでした。 大きく円高になっているのは米ドルに対してだけであり、ユーロをはじめと したその他の通貨についてはそれほどの円高にはなっていなかったからです。

ですから、米ドルのみの外貨預金を多く保有していたとすれば、円高による 為替差損に加え、金利低下による利息収入減少という2つの影響を受けてしま いました。

ところが、米ドルだけでなく、例えばユーロも同額だけ保有していたならば、 円高による為替差損の影響を半分近く軽減できたのです。

為替相場は、二国間のバランスで動きます。ですから、例えば米ドルが日本円 より弱くても、ユーロが日本円より強ければ、米ドルとユーロの双方の通貨を 持っていることで、為替差損はある程度回避できます。

為替相場は、想像以上に大きく動きます。豪ドル・円など、単一の通貨間でみ れば、2〜3年の間に、50%を超える円高になることも決して珍しくありませ ん。為替変動による影響をできる限り軽減しつつ、高金利を確保するために、 投資対象とする通貨の分散は重要です。

2.いかなる可能性も排除しない

1.で述べましたように、複数の通貨へ投資することで、多くの場合、為替変 動による影響を軽減できます。しかし、100%ではありません。 世界各国の中で、日本円が最も強い通貨となった場合は、複数の外貨へ投資し ようが、その全てに対して円高になり、為替差損は回避できないことになって しまうからです。

実質実効為替レート(外貨に対する円の総合的な強さを、物価上昇の影響を加 味して表したもの)でみると、2007年の夏には、1985年以来の水準にまで円安 が進んでいました。その後、多少円高になったものの、未だに、実質的なかな りの円安水準であることには変わりありません。

つまり、現状は円安が行き過ぎた状態である「円安バブル」の可能性が大いに あります。この一因となったのが、「円キャリー取引」(低金利の円を借りて 高金利の外貨で運用する取引)です。

現時点では、ドルだけが安くなっていますが、この「円安バブル」が仮に崩壊 したとしたら、あらゆる外貨に対して、円が全面高となります。いくら複数の 外貨に分散投資しようが、為替差損をまともにくらってしまいます。

金利の面で考えても、例えば日本円の金利が上昇、外貨の金利が低下となれば、 わざわざリスクを取って外貨で運用せずとも、日本円で運用すればよいことに なります。現時点では到底考えられないことですが、そうなる可能性も決して ゼロとは言い切れません。

あらゆる可能性に対応するため、全体の運用資産に対して外貨への投資割合を どの程度とするか、定期的に検討・見直しすることが重要になってきます。

最終的には、各投資家自身の相場観に委ねるしかありません。ただ、少なくと も当面の間は、「円安バブル」の崩壊に備えて、外貨の保有割合は少なめにし ておく、あるいは現時点での新たな外貨投資は見送る、といった対策も検討す べきでしょう。

「日本円は外貨に比べて弱い」、「外貨の金利は日本の金利より高い」、とい うのが、昨年の夏までの「常識」でした。しかし、資産運用の世界では、「常 識」が常に通用するとは限らないということは、昨今の円高ドル安や、急激な 利下げにより明らかです。

「将来はこうなる」と決め付けずに柔軟に対応していく、そんな姿勢が今の個 人投資家には求められています。

(当コラムの内容は、特定の金融商品の売買や投資行動を推奨するものではあ りません。実際の投資に際しましては、自己責任により行ってください)


足立武志
公認会計士、税理士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)
株式会社マーケットチェッカー取締役

1975年生まれ 神奈川県出身 一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として、執筆活 動、セミナー講師等を通じ、個人投資家が資産運用で成功するために必要な知識や情報の提供に努めている。

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