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リチャード・ブックステーバー/長尾慎太郎/井田京子 経済理論の終焉 金融危機はこうして起こる

経済理論の終焉 金融危機はこうして起こる

リチャード・ブックステーバー, 長尾慎太郎, 井田京子
パンローリング
四六判 408頁 2019年1月発売
本体 2,800円  税込 3,080円  国内送料無料です。
この商品は 本日 発送できる予定です。 (発送可能時期について)
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エージェントベースモデルは危機回避の救世主!
経済学者の考える経済理論では金融危機に対処できない!
「経済理論」というカルトに憑りつかれた経済学者たち
経済学はどうしてこうも当たらないのか

私たちの経済は大不況から回復したかもしれないが、経済学はしていない。世界有数のリスクマネジャーであるリチャード・ブックステーバーは、本書で人間のありようと、この世界の根本的な不確実性を考えれば、標準的な経済モデルとその前提である経済理論では金融危機に対処できない理由を述べている。それでは代わりのモデルはあるのだろうか。ない! 少なくとも、過去200年間に使われてきたモデルのなかにはない。そこで著者はエージェントベース経済学と呼ばれる新たな手法を提案している。これは、私たちが通常、経済学で想定する「オートマトン(最適な行動をとる人)」ではなく、「普通の人間」だという事実からスタートしている。

ブックステーバーが提唱する画期的なパラダイムによって、これまでよりもはるかにうまく危機を防いだり、発生してしまった危機をよりよく管理したりすることができるようになるだろう。彼が述べているように、私たちの多様な記憶や想像力は、各人の経済行動に予想外の変化をもたらす。エージェントベースモデルは、既存の経済学の手法に見られる機械的で非現実的な構造をなくし、このようなニュアンスを含めることができるのだ。彼はこれを使って、根本的な不確実性(予想を超える状況になったとき)や緊急事態(無害な日々の相互作用が組み合わさって突然混沌となる)などの問題に取り組んでいる。まず、将来の危機を過去から予測することはできないという点から、ブックステーバーはマーケットの現実に注意を向け、人間が起こすことを「語り」という形で認識する方法を提案している。

20世紀における経済学の失敗はさておき、本書は新しくて革新的な見方と、より現実的で人間的な枠組みを提供することで、今日の金融システムが再び破綻するのを阻止する試みでもある。本書は刊行と同時に古典となった!


■本書への賛辞

「この素晴らしい本は、科学から哲学、文学まで複数の分野の重要な洞察を結びつけ、それを金融の安定化や経済のモデルに応用している。著者は、このような掘り下げた視点から、2008年の金融危機に関するたくさんの役立つ情報を提供し、その波紋が金融制度のなかでどのように広がっていったかを明らかにした」――ブレーク・ルバロン(ブランダイス大学)

「経済学の標準的な枠組みを捨て去る本書は、学術的で、面白く、古典になることは間違いない。著者は、金融危機を最もうまくモデル化できるのは、複雑な環境のなかで人がヒューリスティクスに基づいて交流することで、危機が実際に起きているときだと主張している」――ダレル・ダフィー(スタンフォード大学)


■著者紹介

リチャード・ブックステーバー(Richard Bookstaber)
投資銀行(モルガン・スタンレー、ソロモン・ブラザーズほか)や大手ヘッジファンド(ムーア・キャピタル、ブリッジウオーターほか)でリスク管理の責任者を務めたのち、米国財務省を経て、現在はカリフォルニア大学で教鞭をとっている。『市場リスク――暴落は必然か』(日経BP社)の著者。

■目次

監修者まえがき

第1部 序論
第1章 危機と黒点
第2章 人間であること

第2部 ヨハネの黙示録の四騎士
第3章 社会的相互作用と計算既約性
第4章 個人と人波――創発現象
第5章 文脈とエルゴード性
第6章 人間の経験とラジカル(根源的)な不確実性
第7章 ヒューリスティクス――人間らしく行動する方法

第3部 過去と未来のパラダイム
第8章 危機における経済学
第9章 エージェントベースモデル
第10章 複雑性の世界のエージェント

第4部 金融危機のためのエージェントベースモデル
第11章 金融システムの構造――エージェントと環境
第12章 流動性と暴落
第13章 エージェントベースで見た二〇〇八年の危機

第5部 経済理論の終焉
第14章 それは数字か、それとも物語か――説明ツールとしてのモデル
第15章 結論

謝辞
注釈
参考文献


■監修者まえがき

本書は元投資銀行員で米国財務省勤務の経験もあるリチャード・ブックステーバーの著した“The End of Theory : Financial Crises, the Failure of Economics, and the Sweep of Human Interaction”の邦訳である。彼はリーマンショックを予言した『市場リスク――暴落は必然か』(日経BP社)を著したことで知られ、金融市場の振る舞いに関して示唆に富む提言を行ってきた。システムとしての金融市場はそのメカニズムやストラクチャを明確にとらえることは難しく、原因と結果の因果関係はかなり希薄である。その不安定な傾向は特に金融危機の際に顕著になり、その推移を事前に知ることはだれにもできない。(続きを読む

■第2章 人間であること

まず、私たちが人間であるというところから考えていこう。人間であるということは社会的ということだ。私たちは、意味のある相互作用を行い、自分の世界や他人との関係を変えていく。また、人間は歴史を持つ。私たちは、それぞれの世界観の背景を育む経験によって形作られている。私たちの行動は、他人とのかかわり方に影響を及ぼす経験や、価値観、何を買ったり売ったり消費したりするかなどと切り離すことはできない。これらのことすべてが動機となって私たちを目標に向かわせる。私たちの人生の原動力が豊かで複雑なのは、経験に相互作用が加わるからで、それによって将来の相互作用の文脈はさらに変化していく。(続きを読む
(ウィザードブックシリーズ273)

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