本書は、20年前のベストセラーの新版で、ETF(上場投信)やリスク管理や神経心理学的な投資コンセプトの最新情報を、だれにも分かりやすく、豊富な例え話とユーモアを交えて、新たによみがえった。
当然、それだけではない。
前著が出版されてからすぐに、真面目な投資家たちにとっては「投資の完全な手引書」として認識され、今でも古典になっている。だが、投資の現場は劇的に変遷しており、とりわけETFの実用性は大きく変化している。また、ライフサイクル投資やリスクの特性、金融や神経心理学的なコンセプトなど、多くの重要な問題についての考え方も進化している。本書はそれらの問題に対応すべく全面改訂されている!
引退した神経科医であり、金融本の著者として絶大な人気を誇る著者はトレードマークと言える魅力的な筆致で、読者が十分な情報に基づいて投資判断を下せるようになる手助けをしている。彼は基本となる「投資の4本の柱」について紹介・詳述し、深く掘り下げている。
互いに関連するこれら4つの絶対不可欠な教訓に目を向けることで、堅実な投資の礎を築く術を学べる。本書には市場の歴史から得られる魅力的な教訓に基づいた実践的な投資アドバイス、投資家としてのリスク許容度を割り出す方法、資本市場におけるリスクとリワードの分かりやすい説明が盛り込まれている。
個人投資家であろうが、投資銀行家であろうが、ジョン・ボーグルのような伝説的な人物の足跡をたどろうと思っている者であろうが、この比類なき1冊は時間の試練に耐え、高いパフォーマンスをもたらすポートフォリオを構築するために必要となる知識と知見をもたらしてくれるだろう!
序文――富への高速道路
第1の柱 投資の理論
第1章 ノーボール、ノーブルーチップ
第2章 がらくた
第3章 ランドモビアの近況
第4章 完璧なポートフォリオ
第5章 大人の投資家のためのアセットアロケーション――パート1
第6章 大人の投資家のためのアセットアロケーション――パート2
第7章 大人の投資家のためのアセットアロケーション――パート3
第2の柱 投資の歴史――市場が暴れ出すとき
第8章 金融史概観
第9章 天井――熱狂の歴史、病態生理、そして診断結果
第10章 底――お金持ちがもっとお金持ちになる方法
第3の柱 投資の心理学――進化の復讐
第11章 誤った行動
第12章 シェークスピアに取り組む
第4の柱 資産運用業界――カーニバルの客引き
第13章 あなたのブローカー(失礼、「投資アドバイザー」だ)はあなたの親友ではない
第14章 改善している投資信託業界
第15章 投資ポルノとあなた
投資戦略 4つの柱をまとめる
第16章 引退するためにはどれほど必要か
第17章 投資戦略を構築し、管理し、そして生活資金
第18章 基本事項
第19章 結論
注
本書は資産運用会社エフィシエント・フロンティア・アドバイザーズの共同創業者であるウィリアム・J・バーンスタインによる“The Four Pillars of Investing, Second Edition : Lessons for Building a Winning Portfolio”の邦訳で、低コストのインデックス型投資信託を使った資産配分によって、長期的な資産形成を図ろうとする人のための入門書である。
各種年金基金制度の混乱・迷走に表象されるように、個々人における資産形成は、現代に生きるわれわれにとって、いまや避けることのできない課題となった。一方で、トマ・ピケティがその著書で明らかにしたように、歴史的には、資本収益率(r)は経済成長率(g)より大きい。つまり、投資によって得られる富は、労働の対価によって得られる賃金を凌駕する。これは、労働には経済的なリスクがほとんど伴わないが、投資にはさまざまなリスクがあることを考えれば、至極当然のことだ。そしてそれが意味するのは、私たち労働者はただ真面目に働くだけではけっして豊かにはなれず、資本家と同様に投資活動を行うことでしか、経済的不安は解消できないという厳しい事実である。
ここで一般に投資の本質は何かと言えば、それはリスクテイクにほかならない。リターンは通常はリスクの対価として得られるものだからである。したがって、私たちは各々の目的や属性に照らして、自分がとれるリスクととれないリスクを峻別し、前者を限界までとる一方で、後者をヘッジするか極力抑える算段を講じなくてはならない。
幸いにして現在では、リスクをとる手段だけではなく、ヘッジする手段も容易に手にすることができる。例えば、融資を得て不動産投資を行う人にとって、金利の上昇は脅威以外の何ものでもないが、以前であれば、繰り上げ返済か固定金利への変更ぐらいしか、それに抗する術はなかった。だが今では、もし金利上昇懸念があるならば、債券先物やCFD(差金決済取引)を使って、簡単にそのリスクをヘッジ、もしくは軽減することができる。おそらく、これから投資を始める人はよほどひどい間違いを犯さないかぎり、資産形成に失敗することはないだろう。(続きを読む)
「輝かしきはリスクなり」は、ザ・フォーエイセズの1995年のヒット曲でも、ウィリアム・ホールデンとジェニファー・ジョーンズの主演の映画でもない。残念。
一方、バースタインの本はリスクをあらゆる面から論じている。読者はこう叫ぶだろう。「なんだって。この本にはロックフェラーのような金持ちになるための投資対象を見つける方法は書かれていないのか」
ロックフェラー並みの金持ちは吹かしすぎかもしれないが、お金持ちになることは確実に可能だ。すべての投資家が理解すべきことがある。それは、投資で豊かになれる道は一筋縄ではいかない。ウォール街の商品棚を見渡して、「これらの七面鳥は飛ぶのか」と分かり切ったことを聞くだけではたどり着けない。
もちろん、だれもが初めて投資をしようとするときにはこの疑問を持つ。われわれは人気の投資信託や株式のリストを徹底的に調べる。市場トレンドを研究し、どれが自らに有利に働くかを占おうとする。本に書かれたあらゆるトリックを使って、下品なまでに豊かになれる投資対象を見つけようとする。だが、その道中、たいていの場合は自分たちが恥ずかしくなるほど無知であることに気づく。(続きを読む)
本書から学べることが1つだとしたら、次のことになる。リスクとリターンは密接に関連している。ときどき発生する大きな損失を経験することなしに高いリターンを期待すべきではない。1990年代後半のインターネットバブルの時期に多くの者たちが学んだように、残念ながら1年で900%上昇する銘柄が、翌年にはあっけなく90%下落することもある。株式に付随するリスクを回避する方法はなく、あとで見ていくとおり、株式市場からいつ退出すべきかを確実に教えられるマーケットタイミングの妖精も存在しない。いかなるときでも、市場の凶事を予言する者はたくさんいるが、あらゆる暴落で、まったくの偶然からそのタイミングを完璧に計れる者が1〜2人はいる。だが、判を押したように、それら天才たちのその後の予想はコイン投げよりもひどい。また、適切なタイミングで売り抜けることができるとしても、いつ市場に戻るかについてはもう一度推測に頼ることになる。次のことを考えてみてほしい。2007年後半の市場の高値から2009年3月初旬の安値まで、S&P500は配当込みで55.2%下落した。その安値から2022年末までに、S&P500は644%上昇した。
このような下落は、株式市場のリターンという演劇を見るためのチケット代なのだ。ジョン・メイナード・ケインズはこれを見事に表現している。
下落相場で逃げ出すべきかどうかを考え続けること、または株価が下落したら自分の責任だと感じることが機関投資家や真面目な投資家の仕事でも、ましてや義務でもないと私は考える。私はそれよりもはるかに踏み込むだろう。時に保有する銘柄の下落を、平静を保ち、そして自らを責めることなく受け入れることが真っ当な投資家の義務である。(続きを読む)
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