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「ナンピン素寒貧」という言葉がある。ギャンなどを代表とする稀代の相場師の中 にも、ナンピンを強く戒めている人は多い。最近流行のデイトレードではその発想す ら無い。「相場についていく」という不滅の真理からするとその流れに逆らう売買法 ということになる。
しかし別の視点で考えれば、「高きを売り、安きを買う」のが相場の本質であり、 その道のプロは「いかに平均値を有利にするか。」に心を砕く。ナンピンか乗せか、 逆張りか順張りか、相場における永遠のテーマであろう。 この本の筆者は徹底したナンピン主義者である。「株式投資で儲かるか否かは難平 をするかしないかである。」とまで言い切る。なぜナンピンは有利になるのかについ ての説明は具体的な数値を伴い、詳細を極めており、これほどの記述は先哲林輝太郎 先生系の書以外にはお目にかからない。「大きくも逆張り、小さくも逆張り」とも言 う。逆張り派、ナンピン主義の私は「ナンピンに対するこういう説明を求めていたの だ。」と賛同。
「殖財」という概念をきちんと持ち、利益率の重要性などもしっかり述べている。 情報の当たる確率は所詮五分五分と心得ている。スタンスは低位株の長期投資、高値 飛びつきを戒める。ポジションを持つ実践者の視点から相場を見ている所は確かに素 晴らしい。
更に(私は小豆専門なので)驚いたのは、商品先物に対する知識もあること。サヤ に対する造詣も深い。先物で失敗する原因は15倍の過大な取引に対する恐怖心があ るからと喝破している。
もっとも、どんな本にもフィットしない所はある。一番の問題点は、株で長い底練 りを待てないから、その「便法」として代用証券を出して商品相場をやれという点。 「二兎を追うものは一兎も得ず」、変動感覚が狂い、上達が遅れるのではないか。ま た、場帖や罫線の書き方などの具体的な売買に対する作業についても記述がない。危 機管理についてふれていないのも気がかりだ。
とはいえ、自分の投資スタンスを確認し、その利点と欠点について考えるのには格 好のテキストブックと言えるだろう。平易な文で書かれたものだが、決して初心者対 象とは限らない奥の深さを持っている相場書である。
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