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株式インサイダー投資法 流動性理論をマスターして市場に勝つ

エド・イースタリング, 関本博英 パンローリング

発想法は合理的だが、実践活用は難しそう

 「インサイダー投資」などどいうと、なにかしらうさんくさいようなイメージがあるが、本書の基本的な発想は、「株価動向は需給で判断しよう」ということである。ここでいうインサイダーとは、企業側、株式を発行(売る)側のことである。

 本書の中では例として需要と供給のバランスによるオレンジの価格動向が示され る。中学校の社会科で習った需要と供給の曲線を連想すればよい。

 株価の動向もこれと同じことで、需要が増えれば株価は上昇し、供給が増えれば 株価は下落する。

 ファンダメンタルズだ、テクニカルだといっても、企業の業績予想はプロが予想したところで大して当たりもせず、アナリストの予想にはバイアスがかかっている。 テクニカル分析は「芸術性」を伴ったもので、その多くは後講釈的な解説が付け加わっていたりして、これもさしてあてにはならない。

 であるならば、株式の需給に焦点をあてて考えたらどうかということである。この発想、理屈そのものは理解しやすい。

 では、株式の供給量、実際に市場で流通する株式、浮動株が増加するのはどのような場合か。それは新株が発行されたり、株式の売り出しがされたりする場合であり、企業関係者が株式を市場で売却したり、ストックオプションが行使されたりする場合である。多くはそれらは株価が高くなった時におこる可能性が高い。

 逆に株式の供給量が減少するのは、自社株買いの償却が行われたような場合。これらはいずれも株式を発行する側の都合によるものである。

 需要の増減はどうか。これは投資家側の資金が流入すれば需要は増加し、逆に流出 すれば需要は減退するということにる。

 無論、供給の減少及び需要の増大は株価上昇要因であり、逆は下落要因である。

 これらを発表される指標等を参考にしながら、市場全体として、その時点での動向はどうかを読み取って、投資に生かしていこうというのが基本的な考え方である。

 本書では個別企業の株式への投資ではなく、レバレッジを効かせた手法も含めて、ファンド等を活用した投資方法を紹介している。

 考え方として意味は理解できるのだが、なかなかな実際の投資にこの手法を直接活用 するのは難しいのではないかと感じた。というか、私自身はこのような発想なり方法で投資を行ったことがないので、慣れておらず実感がわきにくいというのが率直なところである。

 また、例によって翻訳物で直接紹介されるのはほとんどが米国市場の事例なり商品のため、隔靴掻痒感は免れない。

 発想を学ぶという点ではなかなか興味深い内容だが、できればこれを日本市場に置き換えたものを読みたいという印象であった。

(40代 公務員 ふしみん)

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