ファンドマネージャーの株式運用戦略 渡辺幹夫著 同友館
これは前著の「ファンドマネージャーの知恵」の続編とでも言うべきものである
が、一層面白く、ためになる。相場の書には二通りある。実際にポジションを持ち試
行錯誤の末に成功した者の書と、ポンポンと景気のよい語が並ぶが現実の相場に直面
した事のない者の書いた実践には余り役立たない書である。この本はもちろん前者の
ものである。
第一章で作者は、たとえファンドマネージャーという運用のプロであっても予測は
当たるものではないと述べる。当然相場に勝つために売買技術が大切だという話に進
む。私は専門が商品であり、株は門外漢なのだが、筆者の言うことに全く違和感がな
い、それどころか一つ一つの語が身に沁みる。投機する者、相場によって財産を成そ
うとする者に共通する真理がそこに描かれているからだろう。
第四章の「投資家心理と株式運用の原則」はこの本の真骨頂だ。良い相場書には
「損は小さく、利は伸ばせ」と言うことは書かれている。しかし、この書はそこから
更に一歩踏み込み、本質的にこの原則が守られない人間の性を認識し、ではなぜ出来
ないのか、に対して心理学的な考察を加えている。そしてリターンを管理できない私
たちに大切なのはリスク管理であると述べ、損切り手仕舞いの重要性を強調してい
る。「損切りは投資家の権利」だと言い切り、「大底で投げる」ことでさえ悪くない
と言っている。現実に何度か底で投げ売りをし、天井で買い戻して歯噛みした経験の
ある私にとって光明の指す思いである。
第四章と共に意外によかったのが第三章「投資尺度を評価する」である。グロース
とバリューという概念を分類だけではなく、その本質を鋭くついている。グロース株
投資とは順張りの発想、そしてバリュー株とは逆張りの発想であるとしており、なぜ
バリュー株が有利であるかを論理的に述べている。また投資方法としても、三ヶ月リ
ターンリバーサルの有効性を説いている。いわば古くからある「三ヶ月周期」「逆張
りの建て玉法」などの秘法を近代的な投資スタイルとしてリニューアルしたものと言
える。その本質は変わらないが・・・・。
その他、コンバーティブル・アートビラージ、ハゲタカレシオ、PERよりもPB
Rなど、株式投資家には参考になると思われる記述も満載している。
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