1980年代後半に世に出された『テクニカル・アナリシス・オブ・ザ・フューチャーズ・マーケット(Technical Analysis of the Futures Markets)』は大反響を呼んだ。そして、先物市場のテクニカル分析の考え方とその応用を記した前著は瞬く間に古典となり、今日ではテクニカル分析の「バイブル」とみなされている。
そのベストセラーの古典的名著の内容を全面改定し、増補・更新したのが本書である。本書は各要点を分かりやすくするために400もの生きたチャートを付け、解説をより明快にしている。
第1章 テクニカル分析の哲学
はじめに
哲学と論理的根拠
テクニカル分析とファンダメンタルズ分析
分析とタイミング
テクニカル分析の柔軟性と適応性
テクニカル分析を異なる対象に応用
テクニカル分析を異なる時間枠で応用
経済予測
テクニカルアナリストかチャート分析者か
株式と先物のテクニカル分析を簡単に比較
テクニカル分析に向けられる批判
ランダムウォーク理論
一般原理
第2章 ダウ理論
はじめに
基本理念
終値の使用とラインの存在
ダウ理論に対するいくつかの批判
経済指標としての株式
ダウ理論を先物に応用
おわりに
第3章 チャートの仕組み
はじめに
利用できる各種チャート
ローソク足チャート
算術目盛りと対数目盛り
日足のバーチャートの作り方
出来高
先物取引の取組高
週足と月足のバーチャート
おわりに
第4章 トレンドの基本概念
トレンドの定義
3つのトレンドの方向
3種類のトレンド
支持線と抵抗線
トレンドライン
ファン理論
「3」という数字の重要性
トレンドラインの相対的な傾斜角度
チャネルライン
リトレースメント比率
スピードライン
ギャンラインとフィボナッチファンライン
内部トレンドライン
リバーサルデイ
ギャップ
おわりに
第5章 主要な反転パターン
はじめに
価格パターン
2種類のパターン―反転と継続
ヘッド・アンド・ショルダーズの反転パターン
出来高の重要性
目標値の算出
逆ヘッド・アンド・ショルダーズ
複合型ヘッド・アンド・ショルダーズ
トリプルトップとトリプルボトム
ダブルトップとダブルボトム
理想的パターンのバリエーション
ソーサーとスパイク
おわりに
第6章 継続パターン
はじめに
トライアングルパターン
対称トライアングル
上昇トライアングル
下降トライアングル
拡大型パターン
フラッグとペナント
ウエッジ
レクタングルパターン
メジャードムーブ
継続型ヘッド・アンド・ショルダーズ
確認とダイバージェンス
おわりに
第7章 出来高と取組高
はじめに
二次的指標としての出来高と取組高
全市場における出来高の解釈
先物市場における取組高の解釈
出来高と取組高に関するまとめ
ブローオフとセリングクライマックス
COTリポート
コマーシャルズを見よ
トレーダー別ネットポジション
オプションの取組高
プット・コール・レシオ
オプション市場のセンチメントとテクニカル分析を組み合わせる
おわりに
第8章 長期チャート
はじめに
長期的視野を持つことの重要性
先物取引のためのつなぎ足チャートの作り方
パーペチュアルコントラクト
長期トレンドはランダム性に異議を唱える
チャートパターン―週反転・月反転
短期チャートと長期チャート
なぜ長期チャートはインフレ調整しなければならないのか
長期チャートはトレード用ではない
長期チャートの例
第9章 移動平均
はじめに
移動平均―時間の差を平滑化する手法
移動平均エンベロープ
ボリンジャーバンド
目標値としてのボリンジャーバンド
バンドの幅はボラティリティを示す
移動平均は相場サイクルに結び付いている
移動平均として用いられるフィボナッチ数列
移動平均を長期チャートに適用する
ウイークリールール
最適化すべきか否か
まとめ
適応移動平均
移動平均に代わるもの
第10章 オシレーターとコントラリーオピニオン
はじめに
オシレーターをトレンドと連携させる方法
モメンタムの測定
ROCの測定
2本の移動平均を用いるオシレーター
コモディティチャネルインデックス
RSI
70と30のラインをシグナルとして利用する
ストキャスティックス
ラリー・ウィリアムズの%R
トレンドの重要性
オシレーターが最も有効に機能するとき
MACD
MACDヒストグラム
週足と日足を組み合わせる
先物取引におけるコントラリーオピニオンの原理
投資家センチメント指数
インベスターズ・インテリジェンス指数
第11章 ポイント・アンド・フィギュア
はじめに
ポイント・アンド・フィギュアとバーチャート
日中のポイント・アンド・フィギュア・チャートの作り方
水平カウント
価格パターン
3枠反転ポイント・アンド・フィギュア・チャート
3枠反転チャートの作成方法
トレンドラインの引き方
目標値の算出法
トレード戦術
ポイント・アンド・フィギュア・チャートの優位性
ポイント・アンド・フィギュアのテクニカル指標
ポイント・アンド・フィギュア・チャートのコンピューター化
ポイント・アンド・フィギュアの移動平均
おわりに
第13章 エリオット波動理論
歴史的背景
エリオット波動原理の基本的着想
エリオット波動とダウ理論の関連性
修正波
交代の原則
チャネル化
波動4と支持線領域
波動原理の基礎としてのフィボナッチ数列
フィボナッチ比率とリトレースメント
フィボナッチ目標時間
波動理論の3つの面を組み合わせる
エリオット波動の応用――株式市場とコモディティ市場
要約と結論
参考文献
第14章 サイクル
はじめに
サイクル
サイクルの考え方がチャート分析手法をいかに助けるか
支配的サイクル
サイクルの長さを組み合わせる
トレンドの重要性
左右変換
サイクルを分離する方法
季節性サイクル
株式市場のサイクル
1月のバロメーター大統領選挙サイクル
ほかのテクニカルツールとの併用
最大エントロピースペクトラル分析
サイクルに関する文献とソフトウェア
第15章 コンピューターとトレードシステム
はじめに
必要なコンピューター
ツールと指標の分類
ツールと指標の使用
ウエルズ・ワイルダーのパラボリックシステムとディレクショナルムーブメントシステム
システムトレードの利点と欠点
専門家の助言が必要なら
システムの検証・自作など
おわりに
第16章 マネーマネジメントとトレード戦術
はじめに
成功するトレードの3要素
マネーマネジメント
リスク・リワード・レシオ
ポジションの多元化――トレンディングとトレーディング
勝ちが続いたり、負けが続いたあとに何をすべきか
トレード戦術
テクニカル要因とマネーマネジメントを組み合わせる
注文の種類
日足チャートから日中足チャートへ
日中ピボットポイントの利用
マネーマネジメントの要約とトレードのガイドライン
株式への応用
アセットアロケーション
投資一任勘定と投資信託
マーケットプロファイル
第17章 株式と先物の関連性―市場間分析
市場間分析
プログラム売買――究極的な関連性
債券と株式の関連性
債券とコモディティの関連性
コモディティとドルの関連性
株式のセクターと業種
ドルと大型株
市場間分析と投資信託
レラティブストレングス分析
レラティブストレングスとセクター
レラティブストレングスと個別株
市場のトップダウンアプローチ
デフレシナリオ
市場間の相関
市場間ニューラルネットワークソフトウェア
おわりに
第18章 株式市場の指標
マーケットブレドゥスを測る
サンプルデータ
市場平均の比較
騰落ライン
騰落ラインとのダイバージェンス
日足の騰落ラインと週足の騰落ライン
騰落ラインのバリエーション
マクレランオシレーター
マクレラン総和指数
新高値銘柄数と新安値銘柄数
新高値・新安値指数
値上がり銘柄の出来高と値下がり銘柄の出来高
アームズインデックス
TRINとTICKの対比
アームズインデックスの平滑化
オープンアームズ
エクイボリュームチャート
キャンドルパワー
市場平均の比較
おわりに
第19章 要点整理―チェックリスト
テクニカル分析のチェックリスト
テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の調整
公認テクニカルアナリスト
マーケット・テクニシャン・アソシエーション
世界に広がるテクニカル分析
テクニカル分析の別称
FRBの最終的な承認
おわりに
付録A 上級テクニカル指標 トーマス・E・アスプレイ
DI
HPI
STARCバンドとケルトナーチャネル
DIの計算式
付録B マーケットプロファイル デニス・C・ハイネス
はじめに
マーケットプロファイルグラフ
マーケットストラクチャー
マーケットプロファイルの組成原理
値幅展開とプロファイルパターン
長期の市場活動を追いかける
おわりに
付録C トレードシステム構築の要点 フレッド・G・シュッツマン
5段階プラン
ステップ1――まずアイデアを練る
ステップ2――アイデアをもとに客観的なルールを作る
ステップ3――チャート上で視覚的にチェックする
ステップ4――コンピューターを用いて正式な検証を行う
ステップ5――結果を評価する
マネーマネジメント
おわりに
付録D つなぎ足 グレッグ・モリス
期近限月足(ニアレストコントラクト)
2番限足(ネクストコントラクト)
ギャンコントラクト
つなぎ足
期間固定つなぎ足
用語集
参考文献
資料・ソース
とはいえ、この10年でテクニカル分析の分野にも明らかに多くの手法が追加された。私自身が追加した手法もある。1991年に著した第二作の『市場間分析入門』(パンローリング)で紹介した手法は、現在広く活用されており、テクニカル分析の新たな研究分野を切り開く一助になったのではないかと思う。日本のローソク足のような古典的技法やマーケットプロファイルのような新しい手法も、テクニカル分析の分野に入ってきた。今回、新版を著すにあたって、テクニカル分析の全体像を改めて提示し直すものにしなければならないのは明らかだった。私の仕事も変化してきたのだ。
オリジナル版を著した10年前には、私の関心は主に先物市場にあった。だが、近年は株式市場を扱う仕事が増えている。もっとも、30年前に私が業界に足を踏み入れたときは「株式アナリスト」としてであったので、完全に元の位置に舞い戻ったことになる。これは7年間、米CNBCテレビでテクニカル分析を担当したことが間接的に影響している。この番組は主に一般の個人投資家を対象としていた。それが第3作目となる『ザ・ビジュアル・インベスター』にもつながっている。同書の目的は、業種分析や1990年代に非常に人気があった投資信託分析に、テクニカル分析を適用することにあった。
10年前に紹介したテクニカル指標は、主に先物市場で使われていたものである。だが、多くは株式市場でも利用されるようになってきた。そう、今こそ、その手法を株式市場で示すときが来たのだ。率直に言うと、いろいろな領域や分野にも進化があるように、書き手も進化していくものである。また、10年前は重要と思われたものも、今日ではさほど重要でないことがある。私の仕事が進化して、テクニカル分析の原理をすべての金融市場に応用できたというのなら、初期の著作にもその進化を反映させるべきであるというのが正しいことのように思える。本書は、オリジナル版の構造をできるだけ維持することにした。したがって、ほとんどの章立てはオリジナル版と同じである。しかし、内容を改訂し、図表も更新した。テクニカル分析の原理は普遍的であるため、対象をすべての金融市場に広げるのは難しくない。とはいえ、もともとオリジナル版は先物市場に焦点を向けたものなので、本書では株式市場に関する内容を多く加筆している。
また、新たに3つの章を加えた。まず、オリジナル版のポイント・アンド・フィギュアに関する2章(第11章と第12章)を1つにまとめ、新しくローソク足についての章(第12章)を追加した。そして、新たな2章を本書の後ろに追加した。第17章は私が開発した市場間分析の序論である。第18章では株式市場の指標を取り上げた。さらに、付録を一新した。付録Bでマーケットプロファイルを紹介している。より上級のテクニカル指標とテクニカル売買システムの構築法について解説も加えた。用語集も追加した。
本書の執筆には、いくぶん不安をもって臨んだ。「古典」とみなされているオリジナル版を改訂することが良い考えであるかどうか自信が持てなかったからだ。しかし、本書がより良いものになるよう最善を尽くしたつもりである。より熟練し成熟した書き手・アナリストの視点から本書に取り組んだ。また、本書を通して私が常に心に抱いている「テクニカル分析の原理とそれを実践する多くの才能豊かなアナリストたちへの敬意」を示そうと努めた。この分野への彼らの献身な取り組みと成功こそが、私にとって常に癒しとなり、発想のもととなったからだ。本書がテクニカル分析の原理とテクニカルアナリストの真価を認めるものになることを望んでやまない。
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