ベイドは、時の試練に耐え、今なお有効な教えを残してくれた卓越した先人たちの戦略と知恵を統合し、投資や人生の教訓から導き出した包括的な指針を作り上げた。この指針には、ウォーレン・バフェット、チャーリー・マンガー、ベンジャミン・グレアムといった偉大な投資家だけでなく、哲学者や学者や東洋の大人たちのエッセンスが凝縮されているので、この1冊で何百冊も本を読んだ知識が得られるだろう。また、ビジネスや投資や意思決定といった分野における偉人たちの実践的な手法を紹介するとともに、これらのアイデアをバリュー投資だけでなく人生に応用すれば、その成果や報酬は複利的に膨れ上がることも示している。
本書は、バリュー投資における規律を称賛するとともに、ベイドの個人的な経験を振り返りながら、最高の投資は自分自身への投資に尽きるという考えを実証してみせた。投資にかかわるすべての人たちや、人生や対人関係で実践的な知恵を求めている読者に、本書は大きな気づきとブレイクスルーをもたらしてくれるだろう。
「これは傑作だ。本書は、投資家と自分の可能性を追求したいすべての人にとって、生涯学習の決定的な指針となる。ぜひ読むべし」――ジョン・ミハルジェビック(『バリュー投資アイデアマニュアル』[パンローリング]の著者)
「現世の知恵を楽しく情熱的に学んでいるベイドは、素晴らしいロールモデルである。彼は本書を通じて真剣に生涯学習を続けていくことが、いかに人を豊かにしてくれるかを強く思い出させてくれる」――ウィリアム・グリーン(『ザ・グレイト・マインド・オブ・インベスティング』の著者)
「私は長年をかけて、苦しみからではなく、先人をはじめとする多くの人の知恵から学ぶことの重要性に気づいた。私はよく素晴らしい本を贈り物にしているが、この本はぜひ贈りたい1冊だ」――アーノルド・バン・デン・バーグ(センチュリー・マネジメントの創設者)
「ベイドは、予想可能であっても投資家がよく陥るワナを避けるために本当に役立つ洞察を、伝説の投資家たちの例を用いて紹介している。投資の生涯学習を助ける最高の1冊となっている」――トーマス・A・ロッソ(ガードナー・ロッソ&ガードナーLLCの幹部)
「ベイドはすべての投資家が読んでおくべき本の基本的な枠組みを提供している。これまで読んだなかで最も包括的な投資本として本書を強く勧める」――ポール・ラウンティス(ラウンティス・アセット・マネジメント社長)
「本書には、素晴らしい洞察があふれている。本当に楽しい読み物であるとともに、堅実な投資には欠かせない教義のいくつかを思い出させてくれる」――サンジョイ・バッターチャーリヤ(フォーチュナ・キャピタルのマネジング・パートナー)
第1章 序論――最高の投資は自分への投資
第1部 智恵を身に付ける
第2章 学習マシンになる
第3章 格子状のメンタルモデルを通じて智恵を身に付ける
第4章 意図をもった練習によって情熱と集中力を生かす
第2部 強い性格を育てる
第5章 人生で素晴らしいロールモデルや先生や仲間を選ぶことが重要
第6章 知恵を得るには謙虚さから
第7章 慈善活動とその報い
第8章 単純であることは究極の洗練
第9章 経済的に自立する
第10章 内なるスコアカードに従って人生を送る
第11章 人生で成功する秘訣は満足の先送り
第3部 株式投資
第12章 会社を所有しているつもりで収益力を構築していく
第13章 行間を読んで投資する
第14章 意思決定においてチェックリストが果たす大きな役割
第15章 日誌は反省するための強力なツール
第16章 インセンティブの力を侮るな
第17章 常に数字で考えつつ、過度な「物理学への羨望」も避ける
第18章 知的な投資で大切なことは本質的価値を理解すること
第19章 投資で最も重要な3語
第20章 商品と景気循環株への投資は資本サイクルへの投資
第21章 スペシャルシチュエーションのなかのスピンオフを注意深く調べる
第4部 ポートフォリオの管理
第22章 長期的なバリュー投資の聖杯
第23章 市場はほとんどは効率的だが、いつもではない
第24章 ポートフォリオのダイナミックな管理と個別のポジションサイズ
第25章 優勝するにはまず完走しなければならない
第5部 意思決定
第26章 もっと歴史を勉強し、予想は無視する
第27章 新しい証拠に基づいて考えを更新する
第28章 人生は機会費用の連続
第29章 パターン認識
第30章 運やチャンスや偶然の発見やランダム性の役割に気づく
第31章 バリュー投資家になるための教え
結論 複利の本質を理解する
付録A スロー・ダンス デビッド・L・ウェザーフォード
付録B もし ラドヤード・キプリング
謝辞
注
参考文献
ベイドやスピアを含む投資家の成長物語の数々は、投資における経典でもあり一種の神話でもある。ジョーゼフ・キャンベルは『神話の力』(早川書房)で、「苦しまなくても生きていけるという神話には、一度も出合ったことがありません。神話は私たちに、苦しみにどう立ち向かい、どう耐えるか、また苦しみをどのように考えるかを語ります」と述べているが、これら投資の神話も、彼らが心理的に未成熟な状態から主体的に行動するための自信と勇気を得るまでの、数多くの蹉跌や学び、そしてその結果たどり着いた境地を描いたものだ。
一般に、世に「こうすれば簡単に儲かる」ことを謳う書き物は多いが、成功するまでの艱難辛苦に触れた書籍は少ない。だが、投資や投機に真剣に向き合った体験がある人ならば、結果だけを誇張して取り上げる前者の主張が何の意味もないことを知っていることだろう。成功に至るまでの苦痛を伴った道程に対して、それを全面的に否定すること、そんなものはないほうが良いというのは、非現実的かつ無責任で幼稚な考え方である。
そして、投資があくまで各々の目的をかなえるための手段である以上、投資家としての人生に意味を見いだすならば、最終的な成功だけではなく、自己の弱さを克服し、上達していく経験そのものにも価値があるはずだ。であるならば、私たちは完璧な投資手段(青い鳥)を安易に追い求めることをやめて、著者のように世界の不完全性を受け入れ、投資を通じた自己の内部における精神的・知的な成長と、その成果としての経済的対価を等しく楽しむべきなのだろう。原書のタイトルにはそうしたメッセージが隠喩として含まれていると私は理解した。
著者(インド人)が投資における複合的な視野の重要性を書いた本書は、文化的に合理的かつユニークな解を最良とする欧米人が書いたものと異なり、東洋に生きる私たち日本人には理解しやすいだろう。単なる技法としてのバリュー投資ではなく、それを自己向上の道としてもとらえるきっかけとして強く推奨したい。多くの読者が著者と同じような高みにたどり着き、成功を手にすることを切に願う。
この仲間の規模が増え続けているように、その世界観や自己理解も常に変化している。初めのころ、私はバリュー投資についてうまく投資して金持ちになり、良い生活をするための方法くらいに思っていた。しかし、年月とともに、それよりもはるかに大きな意味があることに気づき始めた。バリュー投資は、可能なかぎり最高の生き方をするためのシステムだと考えるようになったのだ。バリュー投資家の人生の見方には、ミスターマーケットや安全域といった概念だけでなく、はるかに多くのことを含んでいる。これは、「知恵とは何か、どのようにして身に付けるのか」「格子状のメンタルモデルはどのようにして構築するのか」「ストア哲学は人生や投資においてどのような役割を担うことができるのか、あるいは担うべきか」「マハーバーラタの聖典ギーターをはじめとする東洋の知恵は、投資や人生について何を教えてくれているのか」といったことにまで及んでいるのである。
本書は、バリュー投資という仲間が、自分たちが住む世界に関する知識を広げるための最初の一歩なのである。本書では、偉大な人たちの教えを、近年の門弟による更新された形で学ぶことができる。
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