本書は、ゴールドマンサックスのチーフ・グローバル・エクイティ・ストラテジストであり、「株式のゴットファザー」であるピーター・オッペンハイマーによる、前著『ザ・ロング・グッド・バイ(The Long Good Buy)』の続編である。本書では、成長率やインフレや金利といったマクロの要因の構造的な変化がどのように地政学や社会の変化と結びつき、市場の長期的なトレンド(スーパーサイクル)に影響を及ぼすかを学ぶことになる。
オッペンハイマーは、長期的なトレンドと、そのなかで進展する短期的な市場のサイクルのさまざまな要因に関する見識を伝えてくれている。彼は次の長期的なトレンドである「ポストモダンサイクル」に焦点を当てており、その考えらえる特徴とともに投資家が注目すべきことについても説明している。彼は来るポストモダンサイクルと、それを形作るだろう技術的なイノベーションと脱炭素化の相互作用について分かりやすく伝えている。
本書では、第2次世界大戦後の好景気、1970年代のインフレ、その後の長期にわたるディスインフレ、グローバリゼーションの影響や金融危機後のサイクルの政策によって与えた影響といった過去のスーパーサイクルの歴史とその要因が詳述されている。ポストモダンサイクルはこれら過去のサイクルの要素を反映するだろうが、地政学的な状況の変化や気候変動とともに、急速な技術の発展によって再編されている世界で独特の特徴を持ち、まったく異なる問題と機会をもたらす可能性が高い。
本書は市場のサイクルに関心のある者たちにとっては必読本である。近年の経済史、そして金融市場の将来がどのようになるかについて新しく、深淵な見識をもたらしてくれる!
原題: Any Happy Returns: Structural Changes and Super Cycles in Markets by Peter C. Oppenheimer
第1章 サイクルと長期トレンドの概論
繰り返されるサイクル
社会的・政治的サイクル
景気循環
金融市場におけるスーパーサイクル
心理学と金融市場のスーパーサイクル
第1部 構造的トレンドと市場のスーパーサイクル
第2章 株式のサイクルとその原動力
株式のサイクルの4つの局面
4つの局面の原動力
サイクルと弱気相場
弱気相場から強気相場への移行を見定める
第3章 スーパーサイクルとその原動力
経済活動のスーパーサイクル
近代――1820年代以降の成長
インフレのスーパーサイクル
金利のスーパーサイクル
スーパーサイクルと政府債務
格差のスーパーサイクル
金融市場のスーパーサイクル
株式のスーパーサイクル
第2部 戦後のスーパーサイクル分析
第4章 1949〜1968年 第2次世界大戦後の好景気
国際的な取り決めとリスクプレミアムの低下
力強い経済成長
技術的なイノベーション
低く、安定した実質金利
国際貿易の活況
ベビーブーム
消費と信用の拡大
夢中になる消費主義
第5章 1968〜1982年 インフレと低リターン 投資家にとっては失われた10年
第6章 1982〜2000年 モダンサイクル
1.グレートモデレーション
2.ディスインフレと資本コストの低下
3.サプライサイドの改革(規制緩和と民営化を含む)
4.ソ連の崩壊(地政学的リスクの低下)
5.グローバリゼーションと国際協力
6.中国とインドの影響
7.バブルと金融のイノベーション
第7章 2000〜2009年 バブルとトラブル
ハイテクバブルの崩壊
2007〜2009年のリーマンショック
レバレッジと金融のイノベーション
長期的な成長期待の低下
株式のリスクプレミアムの増大
債券と株式の逆相関
第8章 2009〜2020年 リーマンショック後のサイクルとゼロ金利
1.低成長だが、株式のリターンは高い
2.フリーマネーの終焉
3.低ボラティリティ
4.株式のバリュエーションの拡大
5.ハイテク株やグロース株がバリュー株をアウトパフォーム
6.アメリカが世界各国をアウトパフォーム
第9章 パンデミックと「ファット・アンド・フラット」リターン
パンデミックの大混乱
パンデミックとインフレ
ディスインフレからリフレへ
現実に立ち返る――実際の資本コストが上昇に向かう
黄金律が再浮上する
主導するセクター、そしてバリュー株への旋回
第3部 ポストモダンサイクル
第10章 ポストモダンサイクル
構造変化とチャンス
モダンサイクルとの違い
1.資本コストの上昇
2.成長トレンドの鈍化
3.グローバリゼーションからリージョナリゼーションへの変化
4.人件費とコモディティ価格の上昇
5.政府支出と債務の増大
6.資本支出とインフラ支出の増大
7.人口動態の変化
8.地政学的緊張の高まりと多極化した世界
第11章 ポストモダンサイクルとテクノロジー
技術革新の特徴
熱狂、投機、そしてバブル
優性効果
二次的技術の登場
ハイテクは最大のセクターであり続けられるか
現在支配的な地位にあるハイテク企業はリーダーであり続けられるか
インターネットの世界の低い生産性
「あったらよいな」から「なくては困る」に
生産性とAIの影響
AIとテクノロジーのPEARLsフレームワーク
第12章 ポストモダンサイクル――「オールドエコノミー」のチャンス
「オールドエコノミー」のチャンス
国防費
インフラ支出
グリーン支出
政府の政策と支出
コモディティへの支出
どうすれば投資市場は資本投資ブームの役に立てるか
雇用の未来
ノスタルジーの力を忘れてはならない
自転車に乗って
第13章 まとめと結論
サイクル
スーパーサイクル
ポストモダンサイクル
参考文献
推薦図書と文献
本書はゴールドマン・サックスのチーフ・グローバル・株式ストラテジストであるピーター・C・オッペンハイマーによる“Any Happy Returns : Structural Changes and Super Cycles in Markets”の邦訳で、マクロ分析のなかでも、国単位でのGDP(国内総生産)やインフレ率や失業率や金利といった経済動向の分析を、過去の歴史を振り返りながら行い、その構造変化やスーパーサイクルを理解しようとする解説書である。
私はこの本を、投資家として大変興味深く読んだ。一般に投資家にとって必要な分析は、経済環境のマクロ分析、投資対象のファンダメンタルズ分析、さらに市場参加者の行動や心理の分析の3つである。そして、多くの人は各銘柄の良し悪しの分析やタイミングを計るための時系列のテクニカル分析に興味があるようだ。
しかし、投資や投機を専業にして生活している人は別として、ほとんどの個人投資家にとって重要なのはむしろマクロ分析である。なぜなら、投資のリターンの大半は、個別銘柄の選択やタイミングの巧拙ではなく、市場全体の動き(ベータ)で決まるからである。ゆえに日本の確定拠出年金(iDeCoなど)や少額投資非課税制度(NISA)のように家計の安定的な資産形成を目的とした投資においても、多くの投資家にとって重要な課題はアセットクラスの選択と配分(アセットアロケーション)にある。(中略)
もしあなたがさらに少しだけ手を加えて、自身のポートフォリオ運用をより良いものにしたいと思うならば、まず最初に試みるべきは、個別銘柄の選定やトレードタイミングを計ることではなく、マクロ分析によって現在および近傍の未来の経済環境を理解・予想し、各アセットの配分を機動的に少しだけ変化させることだろう……(続きを読む)
「私は自転車に乗りながらそれを考えた」――アルバート・アインシュタイン
前著『ザ・ロング・グッド・バイ(The Long Good Buy)』は、景気循環と金融市場のサイクル、そしてそれに影響を与える要素を取り上げた。本書はそれを補うことを目的としている。過去と将来における経済・金融市場の長期的な構造変化と、サイクルが展開するさまざまな長期的トレンドに目を向ける。本書は学生や市場参加者、そして経済や金融市場の歴史や長期的パターンやトレンドの原動力となる要素に関心のある人々に向けたものだ。
金融市場には、短期的なサイクルと長期的なスーパーサイクルや長期的なトレンドのパターンが存在するが、その長期的なトレンドのなかで短期的なサイクルが見られる。短期のサイクルは景気循環と大いに関係する。1850年以降、全米経済研究所によると、アメリカ経済では景気後退が35回、主要な株価指数が20%以上下落する弱気相場が29回あった。第2次世界大戦終結以降で見ると、アメリカ経済の景気後退は13回、株式の弱気相場は12回である。
株式市場は景気循環に先行する傾向がある。第2次世界大戦以降、株式市場は平均すると景気後退の7カ月ほど前に高値を付け、経済が回復を始める7カ月ほど前に底を打ってきた。(続きを読む)
金融のサイクルは経済や市場の変わらない特徴だが、より長期のトレンドや「スーパーサイクル」のなかで出現することが多い。この長期的なサイクルを主導する要素がリターンの強力なパターンを生み出し、景気循環の短期的な影響を目立たなくする。短期的なサイクルも重要だが、長期的なより大きなトレンドを理解することで投資家は長期に見たリターンを大幅に高めることができる。
例えば、低インフレ期が長く続けば、その間に景気循環は数回起こる。同様に、力強い経済成長や停滞期が長く続くこともある。その間も、短期的な景気後退に一時的な影響を受ける。このような長期的なトレンドには、特定の市場状況やチャンスが付随することが多い。ほとんどの投資家が時間と労力をかけて、サイクルの次なる展開や変曲点を理解しようとする。しかし、より長期の構造的な展開や変曲点のほうが重要であることが多いが、かなり安易に見過ごされてしまう……(続きを読む)
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