時は15世紀、英国コーンウォールの騎士トマス・レミュエル・ホークは、スローターブリッジの戦いで斃れた323人のうちのひとりだった。戦いの前夜、もう自分が家に戻ることがないと察した彼は、祖父から受け継いだ「騎士の掟」を4人の子どもたちに伝えるべく、遠く離れた戦地で手紙をしたためる。
その「掟」は、孤高、謙虚、正義をはじめとする20の項目で構成され、トマスにとって特にかけがえのなかった物語や出来事で綴られていく――遺された子どもたちの人生の道標となることを願って――そして空が白みはじめ朝を迎える…。
本書は、1970年代初頭、オハイオ州のイーサン・ホークの親族の家で発見された古い手紙がもとになっているという。もともとケルノウ語で書かれていたものだが、専門家の逐語訳を経て、ホークの手により復元・編集され、現代の言葉でよみがえった。すべての物語は、東洋と西洋の古代からの教えや哲学、さらには現代の精神的および政治的著作がベースになっている。
ここに収められたすべての物語は、東洋と西洋の古代からの教えや哲学、さらには現代の精神的および政治的著作がベースになっている。古今東西すべての場所と人に通じる、善き人に欠かせない要素だ。イーサン・ホークによれば、「私は常に騎士の概念を愛してきました。それはよい人であることをクールにします。また、私はクールでいい人になることを目指しています」。また、「(この本は)なかなか話題にしにくい道徳的なことを子どもたちと話すためのよいツールになっている」とコメントしている。映画ファンはもちろん、国や文化、年齢、性別を問わず、語り継ぎたい“ひと”にまつわる普遍的な要素がぎっしり詰まったオーディオドラマ。
「まず知らねばならんことは、そなたはそこへ行かずともよいということだ。そなたは今もずっと正しいときに正しい場所におるし、これまでもずっとそうだった」
「真の戦いとはわれらみなの内に棲まう二匹のオオカミの争いなのだ。一方のオオカミは悪。もう一匹は善。おのれの餌付けした方が勝つのだ」
「自分と他人を比べても生まれえるのはいつも二つきりだ、うぬぼれか悔しさ、いずれにしても値打ちはない」
「忘れるな、友とは気の置けない間柄のこと。友がお前を愛してくれるのは、お前が自分に正直だからであって、お前が共にうなずくからではない。 友が傷ついたり悲しんだりしているときに寄り添うのはある意味ではたやすいことである。ただし、とんでもない幸運が友に舞い込んだのに自分はそうでないとき、それでも真心から寄り添うというのははるかに困難なことなのだ」
「真実を言えば自分や他人が傷つくからといって、もっとこっそりとうそをつく場合はさらに多い。苦を恐れるな。炎が熱ければ熱いほど強く硬い鉄が打たれる。事実は常に味方だ。少しの苦もないなら誰もわざわざ物事を学ぼうとはしない」
「他人への最大の敬意になるのは、信頼に足る人物であることであって、ただ他人を喜ばせればいいわけではない。<愛>とは言葉以上の物であると心得よう。それは行動なのだ」
「いずれ。万事よし」
「ホークの筆が描いているのは、心温まる中世道徳譚だ……読みやすく心にもぐっとくる、若者にも高学年の子どもにもうってつけだ」――パブリッシャーズ・ウィークリー誌
「知識を愛する諸氏なら、西洋・東洋の哲学思想が楽しめよう。しかしこの心揺さぶられる物語に沿ってゆけば、誰でもが楽しめる」――メトロ紙
「人生は贈り物だと高らかにうたう、このホークの知恵の書を熟読すべし」――ブックリスト誌
「娯楽と気づきの両立」――『バッファロー・ニュース』
「食べやすく美味しい読み物……本書は必読。実直な行動も、情熱と意志の後押しがあれば、いかに力強くなりうるかを、あらためて思い知らされることだろう」――『フリーランス・スター』紙
その貴人は1483年の冬、スローターブリッジの戦いで斃れた323人のうちのひとりだった。この手紙と掟の文言はもともとケルノウ語で書かれていたが、発見時には傷みも激しかった。
そこで不肖わたくしイーサン・ホークがつなぎ合わせ、手を加えて復元したが、その下敷きになったのはミズーリ大学セントルイス校のリンダ・ショー博士の手になる逐語訳である。
なるべく当時のままの雰囲気の再現に努めつつ、自分の子どもたちにもその手紙がわかるよう心がけたつもりだ。誤りが目についてもどうかご容赦願いたいが、その間違いは勲士トマスやショー博士のせいではなく、わたくしの至らぬところだと断っておく。
勲士トマスの思いを伝えようと頑張ったものの、自分ではうまく言い切れないところでは、数多(あまた)の騎士の文から語句の表現・言い回しを借用している(その名前は巻末に掲げさせてもらった)。
挿絵も本文とともに発見されたものだが、妻のライアン・ホークの手で復元・アレンジされてここに収めてある。
ホーク家は元来ホーカー家といい、〈ホーク〉つまりタカやハヤブサなどの猛禽類とともに営んできた家系だった。わが一家も鳥類とともに生きた長い歴史とともにある。
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