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大手都銀副支店長の竹中治夫は、総会屋対策を担当するポストへの異動を命じられる。
心ならずも特命事項をめぐって不正融資に手を貸した竹中は、一銀行員としての立場で葛藤する。
人事権を握るワンマン会長とその側近との確執、腐敗した政官界、大物総会屋、暴力団との軋轢…苦悩する中堅銀行マンの姿を通して病める金融業界の内実に迫る問題作。
汚濁にまみれた銀行への警鐘 佐高信
処女作『虚構の城』を出した時、高杉良は”覆面”だった。そのために「I社」をモデルにしたと思われるこの小説は、同社の元社員の内部告発小説だといわれた。1976年の7月から8月にかけて出た当時の書評のほとんどはそう書いている。
たとえば『日経産業新聞』には、「発行元の講談社ではペンネームの筆者の”実像”については公表を避けているが、内部事情に詳しすぎるところから元I社社員であるとみられている」
と書かれ『週刊東洋経済』では、高杉を「某石油会社の経営陣に近いポストにいた人物」と指定していた。
小説を読んだ石油業界の人まで一様にそう思い、売行きが異常に速く、書店で入手困難になったため「I社」が買い占めたのではないか、という噂まで流れたのである。
6月20日発行の初版8,000部は、あっという間に売れ、発売3ヶ月ほどで3万部を超えた。
城山三郎、清水一行以来の久しぶりの大型新人、高杉良の衝撃的なデビューだった。
大岩川源太 源太塾(カレンダー)
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高杉良 講談社
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