●源泉分離課税:上記1から3は、総合課税から分離し、それぞれの受領時に一定税率による税額が差し引かれる課税方式。通常は源泉徴収されただけで課税関係は完結する。
4 損益通算はできるものとできないものがある!
損益通算には2つあります。1つは同一所得区分での内部通算、もう1つは他の所得区分との外部通算です。
1.同一所得区分での内部通算は必ずできる!
同一所得区分での内部通算は必ずできるので、第一に検討します。
(ケース1)年金収入200万円ある人が、店頭FX取引で▲30万円の損があった場合
これらは同じ「雑所得・総合課税」の区分内の所得ですから相殺可能です。差引170万円が雑所得・総合課税の対象となります。年金については源泉徴収されているはずですから、確定申告することで、既に源泉徴収された所得税の一部還付が受けられます。
(ケース2)給与収入500万円ある人が、日経225先物取引で50万円の利益、取引所FX取引で▲30万円の損があった場合
日経225先物取引と取引所FX取引は同じ「雑所得・申告分離課税」の区分内の所得ですから相殺可能です。差引20万円が雑所得・申告分離課税の対象となります。年収2000万円以下のサラリーマンで、かつ、利益が20万円以下ですから申告免除です。
2.他の所得区分との外部通算はできない!
他の所得区分との外部通算ができるのは、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得(総合課税)の損失に限られ、投資関連の損失は通常切り捨てられます。
(ケース3)給与収入500万円ある人が、店頭FX取引で▲30万円の損があった場合
給与収入は「給与所得」、店頭FX取引は「雑所得・総合課税」です。この場合は所得の区分が異なるので通算できません。また、店頭FX取引の▲30万円の損、つまり「雑所得・総合課税」の損失は、他の所得区分との外部通算もできません。切り捨てられて終了です。
(ケース4)年金収入200万円ある人が、店頭FX取引ではなく、取引所FX取引で▲30万円の損があった場合
年金収入は「雑所得・総合課税」、取引所FX取引は「雑所得・申告分離課税」です。この場合は所得の区分が異なるので通算できません。
しかし、見捨てられるわけではありません。取引所FX取引の▲30万円の損、つまり「雑所得・申告分離課税」の損失は、確定申告を条件に、翌年から3年間の利益と相殺できます。平成23年分の損失を申告しておけば、平成24年分から平成26年分までの利益から減額できるのです。この制度のことを繰越控除といい、上場株式の売却による損失「株式譲渡所得・申告分離課税」の区分でも同様の救済措置があります。
出典 『FX投資家のための賢い税金の本』 (インヴァスト証券編、近代セールス社刊)
5 繰越控除のさらなる活用
1暦年分の所得を計算し、その税額を確定(精算)するのが確定申告です。平成23年分の確定申告期限は平成24年3月15日(木)となっています。
(ケース)平成22年には実は日経225先物で▲30万円の損があったが、マイナスなので申告していなかった。しかし、平成23年には取引所FX取引で50万円の利益があった場合
日経225先物での▲30万円の損は、「雑所得・申告分離課税」のものですから、前年に損失申告も可能だったわけです。もし申告していれば、同じ所得区分である取引所FX取引の50万円の利益と、今回の確定申告で相殺(繰越控除)できたはずです。
通常、所得税法(租税特別措置法)上の繰越控除の規定には、確定申告書を期限までに提出することが要件だとキッチリしっかり書いてあります。後出し不可能です。
しかし、日経225先物などの「雑所得・申告分離課税」の損失申告、上場株式の譲渡などの「株式譲渡所得・申告分離課税」の損失申告には、期限までに提出することが要件とされていないのです。つまり、そのまま解釈すれば、平成22年分の損失申告(▲30万円の繰越)と、平成23年分の確定申告(50万円の利益−前年分30万円)を行えるのです。医療費控除や住宅ローン減税など別の理由で、既に該当年分に損失なしとして確定申告書を提出していたら厳しいですが、申告していないのであれば検討の余地は十分にあります。