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[コラム] 確定申告で税引後キャッシュ最大化! 個人投資家のための賢い確定申告
2012/02/08

解説: 竹内伸太郎 氏


システムトレードの投資顧問会社
West Village Investment株式会社取締役CFO

TAC株式会社、アーサーアンダーセン税務事務所、KPMG税理士法人、みずほ信託銀行を経て、現職。 上場企業、外資系企業から個人まで数多くの申告実務を経験し、税務・財務コンサルティング業務に精通。
※West Village Investment社は、投資戦略フェア2012 に出展します。


1 はじめに


昨年はトレーダーにとって激動の年だったようですが、皆さんの運用成績はいかがでしたか?

勝った負けたは人それぞれでしょうが、勝っても負けても避けて通れないのが個人所得税の確定申告です。売買手数料やスプレッドの大小に目が向けられがちですが、投資家である以上、税金も考慮した後の最終キャッシュをどれだけ多く残せるかという点をもっと考えるべきです。実際、私の実務経験では常に「税引後キャッシュ最大化」が命題でした。勝ったら申告納税は当然ですが、ポイントは「負けても申告!」です。

本コラムで概要を把握していただき、皆さんの「税引後キャッシュ最大化」の一翼を担えれば幸いです。



2 税法上の所得区分は10種類だが、細分化して考える!


利子、配当、給与など、自分の所得をその発生源泉により区分することから始めます。10個の区分が税法上の定めですが、同じ所得区分でも異なる課税方法があるため、ここではさらに詳細な14種類に区分して考えていくことにします。

所得区分所得の例示 (青字は投資関連の例)課税方法詳細区分
利子所得預貯金の利子、公社債の利子源泉分離 1
配当所得株式の配当、株式投資信託の配当源泉分離2
一時所得保険期間5年以下の生命保険の一時金源泉分離3

所得区分所得の例示 (青字は投資関連の例)課税方法詳細区分
不動産所得アパートやマンション、土地の賃貸収入総合課税4
事業所得商工農漁業、医師、弁護士などの個人事業主の所得総合課税5
給与所得勤務先から受け取る給与や賞与総合課税6
譲渡所得ゴルフ会員権などの売却益、eワラントの譲渡?総合課税7
一時所得懸賞や福引の賞金、競馬などの払戻金、キャッシュバック総合課税8
雑所得年金、アルバイトの講演料、店頭FXの決済差損益、スワップ金利総合課税9

所得区分所得の例示 (青字は投資関連の例)課税方法詳細区分
退職所得退職により勤務先から受け取る退職金申告分離10
山林所得山林の伐採や譲渡による所得申告分離11
譲渡所得土地や建物の売却益申告分離12
譲渡所得株式などの売却益申告分離13
雑所得先物取引の損益、取引所FX(くりっく365)の決済差損益、スワップ金利申告分離14

(参考)
●総合課税:上記4から9までを合算し、合計所得に応じた税率を適用する課税方式。税率は15%から50%までと、合計所得が多くなればなるほど高い税率(累進)となる。通常は確定申告が必要。



※表中の税率は所得税のみで、このほかに住民税が一律10%アドオンされます。

出典『FX投資家のための賢い税金の本』 (インヴァスト証券 近代セールス社)


●申告分離課税:上記10から14は、総合課税から分離し、それぞれの所得ごとに累進税率または一定税率を適用する課税方式。通常は確定申告が必要。

出典『FX投資家のための賢い税金の本』 (インヴァスト証券 近代セールス社)


●源泉分離課税:上記1から3は、総合課税から分離し、それぞれの受領時に一定税率による税額が差し引かれる課税方式。通常は源泉徴収されただけで課税関係は完結する。

★ ポイント

例えばFX取引による所得は雑所得であるが、証券会社などとの取引形態によりその区分が異なってくる。取引所(くりっく365)取引は分離課税で申告し、店頭(相対)取引は総合課税で申告となる。何とも複雑である。わかりにくいが、この区分が所得税を考えるうえでの最重要ポイントだ。

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3 所得計算では必要経費をピックアップすべし!


自分の所得を区分することができたら、次は各種所得金額を計算します。 各種所得金額=総収入金額−必要経費で計算します。証券会社などから発行される年間取引報告書をまずは確認し、さらに報告書に記載されないセミナー参加費など、必要経費に算入できるものをピックアップして、上記1から14までの各区分ごとに集計します。 各区分での所得がプラスなら要申告、マイナスなら申告不要、これが原則ですが、いくつかの例外規定もありますので、慎重な判断が必要です。

(参考)
●総収入金額:株式売却収入、先物決済差損益、為替差損益、スワップポイントなど
●必要経費:株式取得費、売買手数料、セミナー参加費など

★ ポイント

  • 必要経費になるかどうかは、その所得を得るのに直接的な因果関係があるかどうかで判断すべし! 税務署に問い合わせると大抵ダメと言われるので、税理士会や商工会議所などが主催する税理士による無料税金相談会などを活用するのもあり!

  • 所得がプラスでも申告不要のケースがある!
    (ケース1)年収2000万円以下の給与所得者(サラリーマン)で、利益が20万円以下の場合は申告免除
    (ケース2)他に所得がない専業主婦などで、利益が38万円以下の場合は申告免除

  • 所得が不運にもマイナスとなっても、次の損益通算の可能性を探ること!

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4 損益通算はできるものとできないものがある!


損益通算には2つあります。1つは同一所得区分での内部通算、もう1つは他の所得区分との外部通算です。

1.同一所得区分での内部通算は必ずできる!

2.他の所得区分との外部通算はできない!

出典 『FX投資家のための賢い税金の本』 (インヴァスト証券編、近代セールス社刊)

★ ポイント

  • 損失でも内部通算は必ずできる! 自分の所得構成を知るべし!

  • 外部通算は難しいが、繰越控除制度の活用を図れ!

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5 繰越控除のさらなる活用


1暦年分の所得を計算し、その税額を確定(精算)するのが確定申告です。平成23年分の確定申告期限は平成24年3月15日(木)となっています。

(ケース)平成22年には実は日経225先物で▲30万円の損があったが、マイナスなので申告していなかった。しかし、平成23年には取引所FX取引で50万円の利益があった場合

日経225先物での▲30万円の損は、「雑所得・申告分離課税」のものですから、前年に損失申告も可能だったわけです。もし申告していれば、同じ所得区分である取引所FX取引の50万円の利益と、今回の確定申告で相殺(繰越控除)できたはずです。

通常、所得税法(租税特別措置法)上の繰越控除の規定には、確定申告書を期限までに提出することが要件だとキッチリしっかり書いてあります。後出し不可能です。

しかし、日経225先物などの「雑所得・申告分離課税」の損失申告、上場株式の譲渡などの「株式譲渡所得・申告分離課税」の損失申告には、期限までに提出することが要件とされていないのです。つまり、そのまま解釈すれば、平成22年分の損失申告(▲30万円の繰越)と、平成23年分の確定申告(50万円の利益−前年分30万円)を行えるのです。医療費控除や住宅ローン減税など別の理由で、既に該当年分に損失なしとして確定申告書を提出していたら厳しいですが、申告していないのであれば検討の余地は十分にあります。

★ ポイント

  • 転んでもタダでは起きるな!損失は将来のキャッシュバックの源泉だ!

  • 今からでも遅くない! 平成20年分からの損失を洗い直せ!



6 さいごに


雑所得・申告分離課税の税率は20%なので、30万円の損失が実に6万円の税効果を生じさせます。日経225mini1枚あたりの往復売買手数料を200円としたら、300回分の取引コストと同等です。

確定申告を行ったことのない方も多いと思いますが、インヴァスト証券から発行された『FX投資家のための賢い税金の本』では、申告書の記載例など非常にわかりやすく解説されていますので、申告初心者の方必見です。

また、国税庁のホームページに無料で使える申告ツールもあります。この4年間ですでに導入された方は別として、平成23年分の確定申告でe-Tax(電子申告)を使えば4000円の税額控除も受けられます。e-TaxにはICカードとカードリーダーが必要で、これらの取得に数千円のコストがかかりますが、申告書への書類添付が不要になるメリットがあります。

自分の所得を自分で申告することで税に対する意識が高まり、結果「税引後キャッシュ最大化」の実現が図られます。是非これを機会に自分の税金にもしっかり目を向けた投資戦略を実行していただければ幸いです。

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(ご注意)
上記の説明は、平成23年12月現在の法令に基づいて掲載しておりますので、法令改正に伴い状況が変わる可能性があります。また、実際の確定申告では、ご自身のみならず他のご家族(親族)の状況などにより、該当規定の適用の有無を判断する必要もあり、注意が必要です。最終的には、税理士などの専門家や所轄税務署とご相談の上、意思決定されるようお願い申し上げます。


解説: 竹内伸太郎 氏


システムトレードの投資顧問会社
West Village Investment株式会社取締役CFO

TAC株式会社、アーサーアンダーセン税務事務所、KPMG税理士法人、みずほ信託銀行を経て、現職。 上場企業、外資系企業から個人まで数多くの申告実務を経験し、税務・財務コンサルティング業務に精通。
※West Village Investment社は、投資戦略フェア2012 に出展します。


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