ベストセラーになった『2030 半導体の地政学』が2021年末に刊行された後、半導体をめぐる世界のパワーゲームは一段と激しい動きを見せています。わずか2年の間にロシアのウクライナ侵攻が勃発。台湾海峡をめぐる米中の軍事衝突の現実味が高まり、イスラエルとアラブ武装勢力ハマスとの衝突が世界を震撼させました。
日増しにきな臭くなる国際情勢の中で、各国は国家の存亡をかけて半導体の争奪戦を繰り広げています。
なりふり構わず台湾、韓国の企業を囲い込む米国。経済制裁で追い込まれて国内生産に走り出す中国。そして日本では台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場の建設が驚異的なスピードで進み、次世代チップの開発を目指し新会社ラピダス(Rapidus)が電光石火の如く設立されました。
半導体をめぐり世界の裂け目が広がっています。その先に現れるのは、いったいどんな世界なのでしょう……。増補版では、2023年末に至るまでの国際情勢を踏まえて大幅に加筆、修正。理科系出身で国際報道の最前線に立つジャーナリストの著者が、世界地図の解像度を高めて半導体の地政学を読み解きます。
序章 司令塔になったホワイトハウス
始まりはルーズベルト・ルーム /もはや半導体はコメではない /新・冷戦の戦略物質
第1章 バイデンのシリコン地図
アリゾナ砂漠の磁力――アリゾナに集結せよ /サプライチェーン改造 /欠けたパズルのピース /膨れ上がる補助金――産業政策の競争が始まった
第2章 デカップリングは起きるか
商務省が放ったバズーカ砲 /制裁の真相 /ケネディの遺産――米通商法232条 /火事を起こしたのは誰だ /「韓国を締め上げる」
第3章 さまよう台風の目――台湾争奪戦
藪から出た巨人 /メルケル転向――主戦場は南シナ海 /TSMCが見る日本の価値とは /迫害から生まれた「半導体の父」
第4章 習近平の百年戦争
ファーウェイの胸中 /自給自足の夢 /飢えた狼は生き残るか /紅色供応鏈 /100倍速の深センスピード
第5章 デジタル三国志が始まる
沿海から内陸へ /米国の「鎖国」 /中国の「自由貿易」 /欧州の「一点集中」
第6章 日本再起動
ラピダスの含意 /東大が仕掛けた起爆剤 /自民党が動いた /誘致の収支決算 /光と電子を混ぜる
第7章 隠れた主役
官邸で車座 /ウエスタンデジタルの深謀遠慮/「富岳」チップは戦略物資になるか /ロボットカーの正体
第8章 見えない防衛線
ウクライナ 影の主役 /イージス・アショア――舞台裏の攻防 /シンガポールの秘密 /秘境コーカサスのシリコン・マウンテン
終章 2030年への日本の戦略
環太平洋半導体同盟 /描く・つくる・使う /発熱を止められるか
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