本書は当時、貧家の出から成功者となった福澤桃介の執筆ということもあり、増刷を重ね書籍である。現在でも引き継がれているビジネスマナーはもちろん、給与から天引きして貯蓄せよ、習慣の奴隷となるななど、その普遍的なメッセージに驚くはずだ。なによりも、当時、相場界でも実業界でも“異端”とされた福澤桃介が、どのような信念のもと仕事に向かっていたのかは実に興味深い。
桃介は貯蓄した資金を基に相場で大成功を収め、その成功をもってなぐり込んだ実業界でも計り知れないほど大きな実績を残した。彼の信念は、「金儲けは悪いことではない」ということである。努力して手にしたからこそ、金を大切にする。金を大切にするから、金がまた集まる。「相場で儲けた金は大切だが、寝ているだけでつく利子はいやな金である」と語る桃介。精力を込めて立ち向かったからこそ、相場で儲けた金は貴重だというのだ。
・寄付はしない
・信用などはされないほうがよい
・憎まれて世を渡れ
世間とは異なる考えで、「偽悪者」のような立ち居振る舞いを見せる福沢桃介が持つお金と仕事に対する気概は、日本国中の元気が低迷したいま、大いに参考になるだろう。
※本書は、明治44年に実業の世界社より刊行された『桃介式』を文庫化にあたり、改題・現代語に編集したものです。
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