美の対象は顔、身体、ヘアスタイル、タトゥー、ファッション、美術作品など多岐にわたるが、主要対象は人そのもの。人が自分を美しく見せるために重ねてきた方法や努力を分析し提示することに中心をおいている。 とくに美学の研究者、美術やファッションその他のアートに関わるプロや、それらに関心を持つ一般の読者は、美醜に関する価値観の文化的・歴史的な幅や変遷について知り、自ら判断するための基準を得ることができるはず。
私たちは、自らを美しく見せることで、恋愛や就職・昇進を勝ち抜き、SNS上で評価を高め、子供たちですら仲間内での競争に負けないよう、日々努力を重ねるが、そもそも人はなぜ美しいものが好きなのか。 本書はその問いに答える一冊だ。
[原題]PSYCHOLOGIE DES BEAUX ET DES MOCHES
実験データに照らしてみると、個人間や文化間の差異はごくわずかにすぎず、社会的背景、文化、性別、年齢の枠を超えて広範囲にわたる見解の一致が見られる。ここでまず、こうした見解の一致は、基本的には顔の「絶対的」魅力(この顔に魅力を感じるかどうか)よりも「相対的」魅力(ある顔が別の顔と比べて魅力的かどうか)を対象としていることを確認しておきたい。言い換えれば、顔写真を魅力的なものからそうでないものへと順番に並べてもらうと、選ぶ側の性別や年齢、文化的背景、さらには選ばれる顔の性別、年齢、人種などにかかわらず、その結果は似たような並べ方になる。
つまり、顔の魅力を決めるとき、私たちは共通の基準を用いてきたようだ。だが、それはいったいどんな基準なのだろう? 現在ではある程度明らかになっている。まず、顔の特徴のなかには、サイズと形の違いによって魅力を高めたり損ねたりするものがある。そういった特徴はたくさんあるが、いくつかの大きなカテゴリーに分類できる。ネオテニー(幼形成熟)、成熟、老化、表情、手入れなどだ。このうち最初の3つのカテゴリーは、年齢と結びついた身体的特徴の変化に左右される。
内面の美しさなんて、あり得ない! ジャン=フランソワ・マルミオン
顔よ、ああ美しき顔よ
美とステレオタイプと差別
「規範と恋に落ちたりはしない!」
きみの毛はステキだね
ソーシャル・ネットワーク上の自己演出―美醜を超えて
外見至上主義の子どもたち
美しき性、そして醜さ
道徳化された身体
美しいもの以外を愛せるか?
美と醜さと職業生活
美しさと醜さ―差別禁止法にもとづくアプローチ
狂乱の時代―変容する身体
「ファッションの世界では、美しさは時代遅れだ」
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特異な身体に美しさを感じとる ダニエル・モワズ
醜形恐怖症、あるいは容姿の欠陥に対する強迫観念
身体装飾の美しさにおける両義性
美容整形の光と影
ボディーアート―芸術作品としての人体
タトゥー―入れ墨の来歴
動物美
自然の美と人工の美
芸術は人類の源である
審美家としての脳の肖像
スタンダール症候群―作品が心を貫くとき
現代美術に試される美的価値
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