「感情的になってはいけない」「怒りは抑えなさい」「泣くのはやめなさい」「いつも明るく前向きでいなさい!」。私たちが親や社会から教えられてきた“ポジティブ思考”や“感情より論理”という考え方が、心の自由を奪っていた!
エンパスとは、感情を解読し、理解する直感能力の持ち主のこと。本書では、「すべての人がエンパスである」という信念のもと、著者が構築した「15の感情を生かす方法」が明かされる。たとえば、怒りは自分の尊厳が脅かされたときに現れてくる警報であり、心の傷の回復を助けてくれる。悲しみには過去を手放し、未来に歩きだしなさいと促す浄化作用がある。つまり、一見ネガティブに見える感情は、とてつもないエネルギーを秘めているのだ。
人間に備わっている心の四元素(地・空気・水・火)と15の感情は紐づいており、そのバランスを整えれば、第五の言語「メタ知能」も目覚めるだろう。
本書では、自身も幼いころに性的虐待を受けたトラウマ・サバイバーである著者の経験と、長年にわたる真摯な研究が生みだしたシンプルかつ体験的なエクササイズを紹介している。心と身体を動かし、少しずつ実践していけば、誰もが自分や他者の感情に働きかける方法を身につけることができる。
怒り、 憎しみ、 恐怖、 羞恥心、 嫉妬、 悲しみ、喜び……すべての感情は魂の言語だ。自分のありのままの感情と存分に語り合えば、つらい過去も悩ましい人間関係も変わっていくはずだ。より広い世界観が身につく究極の非言語コミュニケーション術。
作家、社会科学研究者、教育者。幅広い研究を通じて共感能力を生かす独自のメソッドを構築。 エンパシー・アカデミーの創設者であり、感情を尊重するマインドフルネスの実践を身につけるライセンスプログラム Dynamic Emotional IntegrationRの開発者でもある。サンフランシスコ大学、エサレン・インスティテュート、ナロパ大学、クリパル・センター、人間性心理学会などで教鞭をとるかたわら、ウィリアム・ジェームズ財団の芸術指導者として、歌、ドラム、演劇を活用し、刑務所の受刑者が抱えるトラウマを癒やす活動を行っている。また、公認人事アドミニストレーター、公認キャリア開発ファシリテーターとして、職場での不必要な対立や燃え尽き、生産性の低下の防止に尽力。エンパシーの専門家として多くの分野で活躍している。
著書に『The Art of Empathy: A Complete Guide Life's Most Essential Skill』(2013)、マルチメディア・オンラインコースの『Emotional Flow』(2012)、ヤーニャ・ラリック博士との共著『Escaping Utopia』(2017)がある。
ウェブサイト https://karlamclaren.com/
原題 The Language of Emotions: What Your Feelings are Trying to Tell You
by Karla McLaren
住友 進(すみとも・すすむ)
翻訳家。早稲田大学第一文学部卒業。訳書に、ダレン・ハーディ『複利効果の生活習慣――健康・収入・地位から、自由を得る』(パンローリング)、デイヴィッド・デステノ『なぜ「やる気」は長続きしないのか― 心理学が教える感情と成功の意外な関係』(白揚社)、プリア・チャタジー『アメリカ超一流大学完全入試マニュアル』(講談社)、マシュー・ホワイト『殺戮の世界史―人類が犯した100の大罪』(早川書房)など多数。
「この本は、私と他者との関わり方、そして自分自身との関わり方を永遠に変えた」
「カーラ・マクラーレンの感情に対するユニークで共感的な視点は、もっとも「ネガティブな」感情さえも再評価し、人間の魂の深さを理解する道を開く」
第1章 意識的人生をつくりだす――イントロダクション
私たちはみなエンパスである(立ち読みページ)
第2章 エンパシーとは何か?――感情によるコミュニケーション
心の傷と通過儀礼/解離という防御機能/アニマルガール/「スピリチュアル」の限界/感情を知的にとらえる
第3章 良い感情・悪い感情はない――私たちはなぜ混乱してしまうのか?
「感情的である」とは悪いことか?/表現と抑圧の間を選ぶ/エンパシーの基本エクササイズ
第4章 すべての感情には意味がある――7つの知能と四元素を理解する
四元素モデルとは?/エンパシーで心の中に「村」をつくる/「判断すること」についての誤解/判断力の正しい使い方/知性にすべてを任せていないか?/才能を発揮する
第5章 四元素のバランスを取る――第五の元素を目覚めさせる
地の元素は身体とつながる/空気の元素は論理的思考とつながる/水の元素は感情とつながる/火の元素は直感とつながる/第五の元素「メタ知能」とは?/完璧さよりバランスに留意する/依存や気晴らしに逃げない
第6章 なぜ、現実から逃げだすのか?――依存・気晴らし・解離の原因
依存や気晴らしに共感をもたらす/「苦しみの意味に気づいたときに、苦しみはやむ」/「苦しみに抵抗しようとすると、苦しみは倍になる」
第7章 なぜ、トラウマを再現するのか?――正しい「通過儀礼」の役割を知る
トラウマの軌跡をたどる/トラウマへの三つの対応/トラウマの社会的側面/闇の世界に向かう旅――日常に戻る旅/トラウマを越えて帰還する場所/「最後は素敵になるだろう」
第8章 感情の力でトラウマを解決する ――「許し」では傷を癒やせない
怒りと恐怖の復活/怒りと許しの複雑な関係
第9章 愛は感情ではない――感情によく似た感情より深い約束
愛は不変である
第10章 エンパシーを開発する――基本となる五つのエクササイズ
魂の「五元素」を結びつける/第1の方法:グラウンディング/第2の方法:境界線を引く/第3の方法:契約書を燃やす/第4の方法:意識的に不満を言う/不満を言うこと vs アファメーション/第5の方法:元気を取り戻す/変化と現状維持――ダンスを理解する
第11章 水の中に進む――感情のすべてを目覚めさせる
喜んで感情を迎え入れる/すべてのものを結びつける
第12章 怒り――保護と回復を助ける感情
怒りに潜むメッセージ/他人の怒りを尊重する/怒りで行き詰まったときやるべきこと/激怒と憤怒にどう向き合うか?/第三段階の道への聖なる空間
第13章 無関心(アパシー)と退屈 ――怒りの仮面となる感情
アパシーが秘めたメッセージ/他人のアパシーを尊重する
第14章 罪の意識と羞恥心――誠実さを取り戻す感情
罪の意識と羞恥心の違いとは?/羞恥心が伝えるメッセージ/ほんとうの羞恥心を確認する/羞恥心にとらわれたときやるべきこと/他人の羞恥心を尊重する/トラウマ・サバイバーと有害な羞恥心
第15章 憎しみ憤り・侮辱・嫌悪を映す鏡の感情
魂の「シャドー」とは何か?/憎しみが示唆するメッセージ/憎しみで身動きが取れないときやるべきこと/他人の憎しみを尊重する/シャドーと向き合う/憎しみを怒りで癒やす
第16章 恐怖――集中して危機を逃れる感情
恐怖・パニック・怒りの関係/恐怖に隠されたメッセージ/他人の恐怖を尊重する/心配と不安が邪魔をするとき
第17章 混乱――恐怖を隠す仮面の感情
他人の混乱を尊重する
第18章 嫉妬と羨望――貪欲とも関連するレーダーの感情
嫉妬が訴えるメッセージ/他人の嫉妬を尊重する/羨望が告げるメッセージ/羨望や貪欲にはまったときやるべきこと/他人の羨望を尊重する
第19章 パニックと驚愕――トラウマを含む凍りついた感情
パニックと驚愕が叫ぶメッセージ/二匹の子ネコの物語――トラウマの解決には運動が大切
第20章 悲しみ――解放し、元気を取り戻させる感情
悲しみがささやくメッセージ/悲しみに主導権を奪われてはいけない/他人の悲しみを尊重する/絶望の罠にはまったときやるべきこと/他人の絶望を尊重する
第21章 悲嘆――魂の深い川に浸る感情
悲嘆が告げるメッセージ/「悲しまない」と決めると悲しい結果になる/深い悲しみと儀式の重要性/悲嘆で動けないときやるべきこと/他人の悲嘆を尊重する
第22章 抑うつ状態――癒やしのための「一時停止」を促す感情
適応障害からのメッセージ/抑うつ状態を身体的に癒やす/幸福で抑うつ状態は消えるのか?/個人的抑うつ状態と文化的抑うつ状態の相互作用/抑うつ状態で行き詰まったときやるべきこと/他人の抑うつ状態を尊重する
第23章 自殺衝動――夜明け前の闇の感情
自殺衝動が明かすメッセージ/自殺衝動で人生に行き詰まったときやるべきこと/他人の自殺衝動を尊重する
第24章 幸福――楽しみと期待に満ちた感情
幸福は伝染する
第25章 満足――感謝し、自分を認める感情
満足は勝つことではない
エクササイズ 満足感に感謝する
第26章 喜び――人と心で交流するための感情
他人の幸福、満足、喜びを尊重する/高揚感で舞い上がったときやるべきこと/他人の高揚感を尊重する
第27章 ストレスと抵抗――感情の物理学を理解する
根本的にストレスを解決する方法/ストレスや抵抗の持つ創造力
第28章 感情こそあなたの母語だ――よく生きるための人生の芸術
感情の聖なる空間を理解する/自分の感情を大切にする
これらの能力はすべて、今この瞬間、あなたの心の中に存在している。すなわち、あなたの感情の中で働いている力なのだ。感情の力を使えば、自分とはどのような存在なのか自覚できるし、人間関係も驚くほどうまくいく。意識を集中し、一つひとつの感情に隠された情報にきちんと取り組めば、自分のもっとも深い部分から響いてくる声が聞こえるようになり、心の一番深い場所にある傷を癒やすことができる。自分の抱く感情を、問題を解決するための大切な道具にすれば、あなたは自分とも他人ともうまくやっていける、適応力が高い人へと成長していけるだろう。これは素晴らしいことだ。ところが、人間が築き上げてきた文化は、感情をそれとは正反対に扱ってきた。その結果、この真実はほとんど受け入れられなくなっているのが実情なのである。
私はエンパス、すなわち感情を解読し、理解する直感能力の持ち主である。だが、実はあなたも私と同じエンパスなのだ。私は幼いころから自分の能力に気づき、さまざまな感情が独自の個性を持っていることを学んできた。どの感情にもその感情なりの声、特徴、目的、用途があるのだ。私にとって感情は、画家にとっての色や影と同様、現実的で、当たり前に存在しているものだった。
私たちが自分自身、他人、想像力、そして目的を前進させ、理解を深め、結びつける助けとなるのは、感受性や敏感性や共感力―エンパシーという能力―なのである。神経学者のアントニオ・R・ダマシオによれば、感情をつかさどる脳中枢と、(外科手術や脳損傷によって)理性をつかさどる中枢が切り離されてしまった患者は、決断できず、他人を理解できなくなってしまうことまで、実際にあるという(彼の著書『デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳』[筑摩書房]参照)。人間を賢くしてくれるのは、言語能力と純粋な合理性かもしれない。ところが、人間を才智があり、決断力に富み、思いやりのある優れた性格に育ててくれるのは感情であり、エンパシーの役割なのである。
人間にとってごくふつうの能力であるエンパシーを、ほとんどの人は言語能力を獲得する過程で失っていく。四歳か五歳になると人間関係において自分の感情を隠したり、抑えたり、ごまかしたりするすべを身につけてしまい、相手が真実を言っていないことに気づいてしまう―感情を偽ったり、大切な言葉を口にしなかったり、相手のしぐさが語っているものを見て見ぬふりをするようになる。言語を学ぶということは、真実を話さないことを学ぶ過程であり、ほとんどの人間関係を見せかけのものにしてしまう。文化やサブカルチャーのすべてが、感情に関してさまざまな暗黙の了解をつくっているが、いずれも感情を隠したり、乱用したり、無視したりするように仕向けているのだ。すべての子どもはエンパスとして生まれてくるのに、ほとんどの場合、この能力を徐々に衰退させながら大人になってしまうのである。
私は三歳のころに深刻なトラウマとなる事件に遭遇し、この不幸な出来事によって、ふつうの子どものようにエンパシーを衰退させずにすんだ。繰り返し性的虐待を受け、心に深い痛手を負い、人間の主要な意思伝達装置である「言語能力」を身につけられなくなってしまったのである。エンパシーが無傷のままでいる人間は、周囲の人たちが心の底に隠している感情につねに気づいてしまう(この状況が続くと、生きづらくなってしまうことが多い)。
それでも、感情の研究に没頭できたのは、エンパシーが邪魔されずにすんだおかげだ。これまでの人生で、私は偽りのない本心から生まれてくる、具体的で正確な伝達者である「感情に関する情報」を探究してきた。しかし、従来の情報の多くは賢明で役に立つものとは思えなかった。それは「怒り=悪いもの」「喜び=良いもの」といった具合に、いとも簡単に善悪で感情を決めつけているせいだった。
例えば、“良い感情”とされているのは喜びくらいのものだが、怒りは他人との間に一線を画し、自分を保護してくれる。“悪い感情”とされている抑うつ状態は「休息を取りなさい」と促してくれるし、恐怖がなければ、いつ危機に陥るかわからない。要するに、感情について教えられていることは、たんに間違っているばかりではなく、まったくの見当はずれであることが多い。
前述したように、私たちの文化は感情を隠すことを強いている。私はエンパスとして育ったので、感情を抑圧される社会で生き残るために、自分なりの方法を見つけださなくてはならなかった。感情を知的、歴史的、心理学的に研究するだけでなく、心、精神、身体、魂など全面的な研究を、感情という豊かなテーマに向けることにした。エンパシーにそっぽを向いてきた文化の中で、エンパスとして生きていこうとするなら、数学や物理などの「知的天才」ではなく、「感情の天才」にならなくてはいけないと気づいたのだ。
本書は、私が生涯にわたって、感情を深く、実用的に理解しようとしてきた探究の成果である。その情報と一連のスキルは、特殊な文化や教育ではなく、感情それ自体の領域からじかに生みだされた。たしかに、私は手に入れられる資料はすべて研究してきたが、本書は従来とは異なる方法で書き上げた。感情を言葉で無理やり説明するのではなく、感情にじっくり耳を傾け、じかに感情と対話することを心がけてきた。
これは難しいことではない。難しく思えてしまうのは、対話のツールを使っていないからにすぎない。エンパシーが使えるようになれば、世の中は知識や価値に満ちあふれていることがわかってくる。言葉以外のメッセージの意味にも耳を傾け、すべての生命そして自然を理解し、周囲の世界と自分を感情的に結びつけることができる。エンパシーを使って感情と会話するのは、音楽を聞くのと似ている。私たちの誰もが、実はその方法を知っているのだ。感情それ自体に耳を傾けるといった、普段とは違う手段を使って実行すればいい。それは道路標識のように感情に名前をつけたり、病気の兆候のように扱うやり方とは違う。感情との対話は、感情の奏でる音楽にじっと耳を傾けることだ。この新しい手法で感情をとらえることができれば、感情をわずらわしいものとして忌み嫌う、「これまでの考え方」を改められる。感情を「素晴らしいメッセージを届けてくれるもの」とみなすなら、人生を意識的によい方向に向かわせる、あらゆるエネルギーと情報を手に入れられるだろう。 「感情は正しい判断を妨げるもの」という考えは過去のものだ。感情から目を背けてはいけない。感情は人生をプラスの方向に向ける準備をしてくれるのだから。注意を払いさえすれば、誰もが自分のエンパシーを使って、一つひとつの感情の中に含まれている素晴らしいメッセージを汲み取ることができるようになる。
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