1945年2月、オーバーバイエルンのフロッセンビュルク強制収容所の門を1台のバスが通過した。そこには68歳のヤルマル・シャハトが乗っていた。シャハトはヒトラー内閣の元経済大臣で、ナチス政権の経済政策を主導した人物だった。ライヒスバンクの終身総裁であり、ドイツを何度も破産から救ったこの男が、なぜ死の淵に立たされたのか? 彼は単なる金融のエキスパートだったのか、それとも冷徹で日和見的で不謹慎な怪物だったのか?
本書は全2巻からなるバンド・デシネ(フランス語圏のマンガ)を1冊にまとめたもの。ヤルマル・シャハトの後半生――第一次世界大戦中からの大胆な金融政策、ナチズムへの協力と反逆、強制収容所の過酷な日々、連合国によるニュルンベルク裁判、冷戦下での新興国の経済復興――を描いている。聡明であると同時につかみどころがなく謎めいた人物であり、ナチスに加担した過去を持ちつつも、史上最高の経済学者の一人として君臨しつづけるシャハトの数奇な運命を追う。
フィリップ・ギヨーム(Philippe Guillaume)[脚本]
1954年生まれ。バンド・デシネに情熱を傾けるジャーナリスト。ACBD(バンド・デシネ批評家・ジャーナリスト協会)元副会長。フランスの経済紙『レゼコー』でバンド・デシネ時評を執筆している。エリック・スタルネールの紹介でピエール・ボワスリーと知り合い、金融界をテーマにした作品の共同制作を開始。その第一作が『Dantès(ダンテス)』、次作が『La Banque(銀行)』である。
シリル・テルノン(Cyrille Ternon)[作画]
作画は独学で習得。最初に作品が掲載されたのは、フランス北西部カーンのバンド・デシネ愛好団体が発行するファンジン『Bol’d encre(インクボウル)』だった。その後、初のプロジェクト『Post Mortem(死後)』(共著)を、次いでダーク作品『Poser mon sac(わたしのバッグをおろして)』(共著)を制作。さらに、『Silien Melville(シリアン・メルヴィル)』の作画を担当している。ほかに、『La Conjuration des Vengeurs(復讐者の陰謀)』ならびに「フレッシュ&ボーンズ」コレクションの1冊『Placerville(プラサービル)』を手がけている。ノルマンディー地方在住。
【原題】Le Banquier du Reich
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