本書は、トレーダーを目指す人だけでなく、「裸のチャート(値動きのみのチャート)のトレード」をよりよく理解したいプロのトレーダーにもぜひ読んでほしい。ボルマンは、何百ものチャートを詳しく解説するなかで、マーケットの動きの大部分は、ほんのいくつかのプライスアクションの原則で説明でき、その本質をトレードに生かすために必要なのは熟練ではなく、常識だと身をもって証明している。
本書は、概念やトレードテクニックを驚くほど隠さず公開していることである。これはプライスアクションの仕組みに関する総合的な教材であり、そのなかには連続した6カ月間(2012年3月〜2012年8月の全取引日)のユーロ/ドルの5分足チャートも含まれている。396枚に及ぶ解説付きチャートを示した第9章だけでも、ほかのトレード本では見ることができない日中のマーケットを分析した膨大なデータベースになっているだろう。本書では、主にユーロ/ドルの5分足チャートを使ってさまざまなテクニックを紹介しているが、プライスアクショントレードは、どんなマーケットでも、どんな時間枠でも、どんなトレード環境でも応用可能だとボルマンは強調する。そのことを示すため、まとめの章では、いくつかの人気の銘柄や時間枠でボラティリティが低い状況が続いた場合(今日のマーケットではよくあること)の対処方法も紹介している。
本書は、トレードでの実践に必要な細部まで広く鋭く目配りしつつも非常に分かりやすく書かれており、すべてのページに質の高い情報があふれている。FXはもちろん、株価指数や株や商品など、真剣にトレードを学びたいトレーダーにとっては、いつでもすぐに見えるところに常備しておきたい最高の書だろう。
第1部 実践的な分析
第1章 トレードするとき、勉強するとき
第2章 プライスアクションの原則――理論
ダブルの圧力
支持線と抵抗線
ダマシのブレイク、ティーズブレイク、適切なブレイク
ダマシの高値、ダマシの安値
プルバックの反転
天井への試し
切りの良い数字の効果
第3章 プライスアクションの原則――実践編
第4章 注文と目標値と損切り
第5章 トレードのセットアップ
パターンブレイク
パターンブレイクプルバック
パターンブレイクコンビ
プルバックの反転
第6章 手動による手仕舞い
ニュースで手仕舞う
抵抗線で手仕舞う
反転で手仕舞う
第7章 トレードを見送るときと、失敗ブレイクからのトレード
典型的な間違い
第8章 第1部のまとめ
第2部 評価と管理
第9章 連続した日中チャート
2012年3月
2012年4月
2012年5月
2012年6月
2012年7月
2012年8月
第10章 トレードサイズ――複利で増やす
第11章 ボラティリティが低いときのトレード
第12章 最後に
ここで、思考の単純化のために価格変化の対数正規性を仮定し、例えば利食いを2σ(標準偏差)、損切りを1σに設定すると、ランダムに取ったポジションが利食い目標値に到達する確率は、損切り目標値に到達する確率の約7分の1しかない。8回に1回しか勝てないのでは、利食いで値幅が2倍取れてもトータルで利益を出すことは難しい(この場合の、確率密度を考慮したリスク・リワード比は4対1と絶望的だ)。逆に、利食いを0.5σ、損切りを0.25σに設定すると、利食い目標値に到達する確率は、損切り目標値に到達する確率の約4分の3である。このように7回に3回勝てれば、利食いの値幅が2倍であればトータルで利益を出せる(リスク・リワード比は2対3と有利になる)。
このため、こうした目標値を設けるエグジットを用いる場合には、期待リターンのボラティリティに対し小さめの値幅を設定するか、もしくは期待リターンの正規性が破壊された有利な局面でポジションを建てる必要がある。それらはどちらも、勢いのある値動きが発生する直前にマーケットに入るべきであることを意味する。結論として、ここではエグジットよりもエントリーのほうがはるかに重要になる。著者が本書の大半をエントリーのタイミングの解説に充てているのはそのためで、プライスアクションのパターン認識によってその見極めが可能であるというのが彼の主張である。(つづきを読む)
また、プライスアクションの原則はマーケットや時間枠を選ばないばかりか、あらゆるトレード環境にも応用できる。このことを示すため、本書の後半では低ボラティリティが続く状況に合わせて通常の方法にひねりを加えて対処する方法も紹介している。そのセクションでは、例としてユーロ/ドル以外の通貨ペアの日中の短い時間枠や、FX以外の人気のマーケットのチャートを使っている。
ちなみに、まったくの初心者の場合は、常に分析のみに集中するということを念頭に置いて読んでほしい。本書では説明のペースを乱さないために、一般的なトレード本やインターネットに書いてある初歩的な説明は省いてある。ただ、テクニカル的に言えば、本書は新人トレーダーと、経験を積んだトレーダーと、それ以外のプライスアクショントレードのメリットと可能性を追求したい人すべてに向けて書いている。 (つづきを読む)
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