浜口準之助様
のんびり投資家様(個別株10年)
炎のディーラー様(投資歴25年)
スマイル様(個別株 26年)
ふしみん様(個人投資家)
新ミレニアムの最初の10年、投資家は自らのポートフォリオを増大させ、またそこから資金を引き出す方法を吟味せざるを得なかった。
金融危機後の回復も、この問題を解決する必要性を和らげることはなかった。今世紀に起こったドットコムバブルと住宅バブルは、基本的な知恵や安定性を欠いた新たな「バブル」に取って代わられた。
だが、何十年にもわたり、投資家が見いださなければならない解を提供してくれる株式市場への取り組み方が存在していたのだ。配当成長株投資は市場のボラティリティを回避するのではなく、システマチックかつ機械的に、それを富を蓄積するうえでの敵ではなく、友とするのだ。そして、市場のボラティリティが持つ大きな影響を受けることなく、ポートフォリオから資金を引き出し、マイナスの複利と呼ばれる致命的な影響を回避することを可能とするのである。
「予想に血道を上げる専門家が多い金融界において、デビッド・バーンセンは長期にわたり配当によるインカムを蓄え、再投資していくことが投資で安定的に成功することの鍵であるという真実を理解し、またそれを奉じるアドバイザーとして突出した存在である」
――ローウェル・ミラー(ミラー・ハワード・インベストメンツ共同創業者兼最高投資責任者)
「30年にわたってベビーブーマーが引退を迎えるなか、唯一合理的な投資目的はインカムではない。インカムの増大である。インカムは、少なくとも生活コストと同じように増大しなければならない。さもなければ資金が枯渇することになるからだ。だが、心配ない。主要な株式の配当は、全体としてみれば、われわれが生きている間はCPI(消費者物価指数)が示すインフレ率のおよそ2倍の速度で増大する。それだけではない。そのような増大する配当を使って生きていくかぎり、子孫に残すべき相続財産が増え続けることにもなるのだ。だが、配当成長株の大きな力は常にほどんど理解されることがなく、投資の世界においては最も過小評価されている現象だと言っても過言ではない。だが、もうそんなことはなくなる。すべての世代の投資家はデビッド・バーンセンの明解かつ読みやすい指導書を読めば人生を先取りすることになるであろう」
――ニック・マレー(『シンプル・ウェルス、イネビタブル・ウェルス(Simple Wealth, Inevitable Wealth)』著者)
「資本市場に対するバーンセンの理解が本書を通じて明確に伝わってくる。オルタナティブ投資からフィクストインカム、そして本書の主題となるアセットクラスである有配株に至るまで、あらゆる種類の投資家が理解できるよう記されている。本書を読めば投資家として成長できることであろう」
――アンソニー・スカラムッチ(スカイブリッチ・キャピタル創業者兼CEO)
「その見事なキャリアを通じて、バーンセンは一貫して配当成長株投資の哲学を実践してきた。本書において、バーンセンは整然かつユニークで、思慮に富んだ方法でその投資プロセスに対する新たな価値ある見識を読者に提供している。バーンセンの配当成長株の哲学を理解すれば、読者は投資家としてより完成した存在となるであろう」
――ジョセフ・M・テラノバ(ビルタス・インベストメント・パートナーズ・シニアマネジングディレクター、2008年からCNBC・エンゼンブルのメンバーを務める)
原題:The Case for Dividend Growth: Investing in a Post-Crisis World
新ミレニアムの最初の一〇年は、投資家教育には絶好の機会となった。つまり、アメリカ株は「失われた一〇年」となったのだ。ちょうどベビーブーマーの引退という人口統計上の厳しい現実が始まったときに、二つの深刻な弱気相場に挟まれた投資家たちは、投資とは何か、そして何が大惨事をもたらすのかを心に留めるチャンスを得たのだ。新ミレニアムの最初の不穏な一〇年と、その後に発生した金融危機後の現実を通して、投資家の行動や判断に影響を与える多くの仮定は疑いを持たれ、その実際が明らかになったように思う。そして、新ミレニアムに先立つ何十年も前から目にしてきたことからすると、一つはっきりしたことがある。配当成長株投資こそは、抜け目ない投資家にとって攻撃にも防御にもなる、時間の試練に耐えた数学的奇跡である、ということだ。第1章 なぜ人々は投資するのか―キャッシュフローこそが王様である
投資業界のおかげでわれわれは「グロース投資家」と「インカム投資家」、「保守的な投資家」と「積極的な投資家」がいるのだと考えてきた。だが実際には、リスク選好や時間軸や個性や洗練度などにニュアンスの違いがあるだけで、これらすべての方針や説明は一つの事実に収束する。つまり、現金を手にすること、だ。それ以外は些末な問題にすぎない。第2章 流行は巡る―配当成長株の歴史的文脈と現実
株式がもたらす年間リターンの半分以上を配当が占めているという時代があった。だが、株価指数の配当利回りが下落するにつれ、われわれは、株価上昇がその歴史的な平均値よりも大幅に大きなものとなり、過去のトータルリターンに等しくなると考えるようになったのではなかろうか。実際には、時間の試練に耐えた企業は配当を支払うようになる。これがすべての業界において正しいことをテクノロジーが証明している。過去も未来も、利益を現金として払い出すことで株主に報いている企業が重要なのだ。そして、その歴史を研究することで、われわれは未来について多くを学ぶことになる。第3章 株式を買うことで配当を得るのではない―配当を買うことで株式を手にする
たしかに配当はわれわれのポケットに入る現金だ。たしかに配当は企業に対する投資の対価として実現するものだ。だが、配当は投資家であるわれわれの利益になるだけでなく、われわれが所有する企業について教えてくれもするということを多くの人々が見落としている。株主と経営陣の利害が一致することが重要なのだ。そして、会計がおかしなことになっている世界において、現金の支払いが「教えてくれる」ことが重要なのだ。第4章 富の蓄積―極端だが世界八番目の不思議
蓄えた富を引き出して使っている人々にとって配当が有利だという話をする前に、配当を使って富を蓄えることが持つ同じくらい大きな力に目を向ける必要がある。富の蓄積に関する物語によって、われわれは複利の奇跡を詳細に検証することになる。実際に、配当成長株に広く分散したポートフォリオに配当を再投資するということは複利が何乗にもなるという話なのだ。つまり、算数と時間を活用することで抗しがたい魅力が生まれるのである。第5章 資金の引き出し方が問題―貯蓄に手をつけるときに負の複利を避けることで幸せに暮らそう
投資アドバイザーたちは、分散したポートフォリオから「システマティックに引き出す」ことを前提に投資計画を策定してきた。だが、切り崩している資産の価格が避けることのできない下落期にある場合はどうするのだろうか。切り崩している資産をどのようにして下落相場という現実から隔離するのだろうか。一つの事実が私の考えをすっかり変えてしまった。つまり、株価は上昇することもあれば、下落することもある。一方で配当の支払いは正の値にしかならないということだ。価値の変動は投資家にとっては避けられないことだが、下落市場において正のリターンだけをもたらすものを選ぶことが、長期的な所得の流れを保全するためにはおおいに役立つのだ。第6章 機会費用という神話―配当成長株投資が残念賞ではない理由
健全で安定した企業に再投資した配当を複利運用することが富を築く優れた方法であろう。支払い配当によって増大したキャッシュフローから引き出すことが、マーケットタイミングを間違えるというリスクにさらされずにキャッシュフローのニーズを確実に満たす防衛的な方法であろう。だが、この戦略の対価として長期的なトータルリターンは大幅に減少するのだろうか。機会費用は大きなものなのだろうか。初期投資額に対する利回りは投資家が理解すべきことであるが、それ以上に実際の過去のパフォーマンスに投資家は驚くかもしれない。第7章 インフレの恐怖―配当成長株に内在する攻撃力と防衛力
投資家が直面する最大の脅威の一つが購買力の喪失であり、それに対応する戦略は数多く存在している。だが、ボラティリティの極めて高いコモディティや貴金属を保有してもそれ自体はインカムを生まない。一方、われわれが発見した歴史的にも最も有効なインフレ対応策に目を向けてはどうだろうか。それは、インフレという現実に合わせて価格を引き上げられる企業(企業がそのようなことはしないインフレなど存在するのだろうか)や、その過程で支払う配当を増大させることができる、または増大させている企業である。第8章 では、自社株買いはどうか
過去二〇〜二五年の間に経営幹部に対する報酬体系が変化したことで、企業が株主に資金を還元する方法も変化している。企業が資金を還元するさまざまな方法に対する賛成意見や反対意見、また配当成長株に関連してどのような意味を持つのかを分析すると、投資家にとってうれしい驚きがある。第9章 目的を達成するためには減配を回避する
配当成長株投資は配当を減少させる企業によって台無しになる。実際に、企業が支払う配当の過去の傾向を分析しても今後のことは不確実なので、この投資方法を回避するアドバイザーが多いのも事実である。グロースとインカムを同時に達成するポートフォリオに含まれるべき、安定的に配当を増大させる企業を見いだすためにはどのような努力が必要となるのだろうか。第10章 混乱を解消する―高利回りと配当成長
人々が犯す最も一般的な誤りは、「高利回り」銘柄は配当成長株投資を行う者が求める夢の銘柄だと考えることである。だが、「高利回り」銘柄を買うことは、最終的に「利回りのない」銘柄を手にする最も確実な方法となる場合がある。高利回り銘柄と明日の配当成長株との違いは大きい。フリーキャッシュフローと意欲こそが重要であり、「セクター」は問題ではない。結論 金融危機後の配当成長株投資のすすめを総括する
付録1――国際市場における配当成長株
付録2――受託者責任の基準からみた配当成長株
謝辞
注釈
アメリカでも日本でも個人の資産形成は、一種のゲームのように資産の絶対額を増やすことがゴールなのではなく、それぞれ何らかの金銭の使途が本来想定されているはずである。人によってそれは、より豊かな生活を送るためであったり、住宅購入や学費に充てるためであったり、あるいはリタイア後の経済的な不安を解消するためであったりするだろうが、いずれにせよ、投資活動の目的は将来のどこかの時点でその資金を使うことにある。
つまり、ほとんどの個人投資家にとって、投資による資産形成の手段は、単に儲かればよいというものではなく、安心して長期的に資産を殖やせること、ならびにそこから必要に応じて投資資金の引き出しができるということが両立されていなくてはならない。 (続きを読む)
本書の幕開きに、この新ミレニアムの最初の一〇年がどのように私が本書で説明した投資哲学に至る発見のプロセスのお膳立てとなったかを説明した。過去一〇年について議論することで本書を締めくくりたいと思う。
一九九九年のドットコムバブル、ハイテクバブルの崩壊から二〇〇八年の金融危機に至る時期が投資の原則を変えてしまったとは思わない。金融危機後の投資は二〇〇八年以前または二〇〇九年以前の大勢とは異なるように見えてしかるべきだと考えている。これは、私が提案していることが現在は正しいが、当時は間違っていたからというのではない。当時も正しかったのではあるが、長い間忘れ去られていたり、誤解されていたからである。
当時も今も、われわれが生きる文化は銘柄選択やマーケットタイミングばかりにこだわっているが、それらには陰に陽にウソが付き物である。つまり、市場の「タイミングを計る」ことに成功するには、チャートを適切に読み解いたり、研究をしたり、達人の導きに従ったり、何らかのお茶の葉を読んだりすることで、望んでいた投資成果を上げ、または避けたいと思っているダウンサイドボラティリティを回避できるという具合だ。 (続きを読む)
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