内容紹介
経営者、実業者のバイブル。ついに音声化。
問:「先生は今日までいろいろな事業を守り立てて来られましたが、その間における事業経営の哲学というようなものがありましたら、それを打ち明けて下さい。」
小林:「事業経営の……。何か「実業之日本」の質問のようだネ、それはつまり無理をしないこと、無理をしたらば良い仕事でもうまく行かない。一番必要な点は大方針に無理をしないこと。つまり世の中のことはなるようにしかなるものでないから、無理をすれば必ず焦る。焦るとそこに破綻が起こって、また無理を重ねるというようになって失敗するものである。つまり雪だるまを転がすような不始末になるものであるが、私が今日までやってきたものは、大勢に逆らわないことと無理をしないことと、それからゆっくりと考えて思案する。一年でも二年でも研究している。少しも無理をしない。その代わり、やり出したならば猛然として突貫するというのが、一番無難な方法ではないかと思っておる。やりかけてダラダラしておったのでは駄目だ。やるまでにはなかなか相当の思慮、注意、随分手間取るが、やりかけたらば猛然と何者をも粉砕するというだけの覚悟で進んで行かなければならぬと思います。つまり、無理してはいかん、戦争でも無理すればきっとどっかに破綻を生ずる。つまり無理をしないという事が、事業の秘訣だろうと思います。」
「成功哲学」「自己啓発」という言葉が独り歩きしている今だからこそ
世の中に数多出版されては消えていくビジネス書の多くは、効率化に重きを置いた技術論、また、どこか地に足の着かないポジティブ・シンキングや根拠の無い陽転思考に頭をぼやかされるものばかりである。
我々は今もってしても、玉石混交の「自己成長の術」を見定めるための眼すら持ちえていないのではないだろうか。
それでは、この情報過多の現代において、正しきを正しきと見定められる能力は如何にして身につければ良いのだろうか。
それはいつの時代・環境に関わらず、確固たる経験と智慧、つまり実学と実業及びその思想信念によってのみ培われる。
本書は阪急・東宝グループ創業者、宝塚歌劇の創始者である小林一三が、実業の基本、人としての基本となる心構えや、それにいたる様々なエピソードを、様々な角度から語っている。
本書で語られるメッセージは時に熱く、辛辣に、ユーモアを交え、そして赤裸々に綴られたものである。
ことに、仕事・実務論と、劇場論、演劇論、観客論、演劇歴史論、興行経営論には大幅にページ数を割き、様々な実例を上げながら自身の考えを包み無く語っている。
全84編・11時間弱に渡るメッセージの全ては順序だてて聴かなくてもいいだろう。興味のあるエピソードや断片的に聴いたとしても、どこを切り取っても、時を越えてあなたの心に刺さるエピソードが何篇もあるからだ。
この知己に富んだメッセージの数々は実に先見の明を持って語られており、昭和10年に著された本書に散見される様々な言葉は、現代日本においても充分に地に足の着いた考え方ばかりである。
経営者のバイブルと呼ばれる所以はここにある。
「世の中へ出るのは、つまり自分の思うようにならないと言うことを経験するためである」
「経費がかからないで、自分のちょっとした注意、ちょっとした発明、ちょっとした工夫で商いの出来るものを、皆が選んでゆくように希望する」
「何も理想があった訳ではない。ただ飯を食うためにやったので、その会社をより良くするのには、どうしたら良いかということに、最善の努力を尽くしただけの話です。」
目次:収録内容
自序
─使う時・使われる時─
教訓談中毒患者
エキスパート讃
こんな人を使いたい
人生学第一課
人物払底の訳
汽車弁二つとお茶一つ
仕える時・使う時
平凡すなわち非凡
信用の三条件
土瓶の酒
日本一のお内儀
飯の味
使う者の立場―T百貨店の社員へ―
太閤記は処世技巧か―某青年との対話―
実力の現わし方
馬鹿の念押し
株主・重役・社員
経営者無能の弁
四つの無駄
事業経営の急所・難所
結局は人の問題
増俸・減俸問答
活人剣
女子店員には結婚第一
技術家の進むべき道
頭脳経済学
希望高く
これから商売を始める人に
人間の味
─事業・東京型と大阪型─
事業・東京型と大阪型
僕の百貨店
私の描く未来の大阪花街
雁治郎と大阪歌舞伎
商売戯語―大阪人のみた読売新聞―
パンテージ・ショウ拝見
電車屋に与えられた話
雑誌経営難題
雑誌と読者層
職業野球団打診
─学生と語る─
─演劇経営作戦─
清く・正しく・美しく―家庭共楽の殿堂―
事業としての演劇
興行方略
清く・正しく・美しく
国民劇の創成
無策の策とぬるま湯の味―素人の抱負、玄人の愍笑―
伝統の持つ力
無策の策
ぬるま湯の味
僕の描く大劇場街ー東京進出の由来―
歌舞伎の現在・過去・未来
大劇場主張の根拠
大劇場芸術の大成
松竹歌舞伎は滅びるか
興行政策と梨園の将来
脚本作家に希望する
脚本黄金時代来
花柳界と演劇
─私の企業戦術─
新しい商売道
日劇の経営
二つの映画戦術
観客層の分析
無策の策
東宝チェーンの役目
食堂と百貨店の経営でも
研究と商機
─夫婦問答─
女性の美は
幸なる結婚への道
理想の夫
和合の急所
芸人の妻に学ぶ
実業家の妻
賢夫人型・愛人型
─あの頃・この頃─
わんぱく時の思い出―士族考―
情報
小使いじいさん
初恋
三井銀行を辞めた頃
「阪急」創立のころ―阪急創立当時を顧みる―
北浜銀行破綻当時の思い出
幸運に恵まれた私の過去
永遠の青春
ふとんと仲良し
警告
小林 一三(こばやし いちぞう)
阪急電鉄、宝塚歌劇団をはじめとする阪急東宝グループの創業者。
鉄道事業を軸として沿線都市開発、住宅、小売、芸術、流通事業など、沿線住民の需要を満たしながら理想の都市開発、生活スタイルを作り上げた私鉄経営モデルの祖。各事業の成功により財界・政界へのへの参画も果たす。
※ 本商品は「私の行き方」(小林一三著)をオーディオ化したものです。
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