内容紹介
何処からか風のように現れる奇怪なる犯罪者「恐怖王」。
彼はまた風のように何処へともなく去っていくのだが、彼が過ぎゆく後には必ず世にも不思議な犯罪が残され、世にも戦慄すべき殺人が行われているのである。
次から次へと起こる恐怖王の怪事件は、毎日日本中の新聞紙面を賑わし、被害圏内にある世人を恐怖と戦慄の地獄に陥れた……
ある日のこと、一代の金ピカ葬儀自動車が東京市中をぐるぐると走り回っていた。その中にある亡骸は盗み出されたものであり、そのままある屋敷へと運び込まれた。運転手のゴリラ男を迎えたロイド眼鏡の男は計画の成功を喜び、
「帰って花婿の支度をくれたまえ」と言う。
ロイド眼鏡の男は、女の死骸に美しく化粧を施して、婚礼衣装を着せ、ゴリラ男と並べて写真屋に記念写真を撮らせた。そして、その写真は女の婚約者であった鳥井青年の元に送られたのである。
ロイド眼鏡の男こそは恐怖王その人であり、この死美人との結婚写真も一つの事件の始まりに過ぎないのであった……
江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ)
日本の推理小説家。1894年10月21日生まれ、三重県生まれ。筆名は、19世紀の米国の小説家エドガー・アラン・ポーに由来する。数々の職業遍歴を経て作家デビューを果たす。本格的な推理小説と並行して『怪人二十面相』、『少年探偵団』などの少年向けの推理小説なども多数手がける。代表作は『人間椅子』、『黒蜥蜴』、『陰獣』など。1954年には乱歩の寄付を基金として、後進の推理小説作家育成のための「江戸川乱歩賞」が創設された。
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