内容紹介
二十五歳の青年である庄司武彦は、
今時珍しい「殿様」の気質を持つ元侯爵、大河原氏の秘書として大河原邸の人となった。
探偵小説という共通の趣味があることもあり、
武彦は大河原氏に気に入られ、邸内の事情に通ずることができた。
その中で特別に武彦の注意を惹いたのが、二人の青年、姫田五郎と村越均であった。
いずれも大河原氏が重役を務める会社の少壮社員で、氏から寵を得ていた。
彼らは互いに嫉妬し、敵視しているようだ。
そしてある日、事件が起こった。
姫田が、岬の断崖から墜落死したのだ。
双眼鏡によって目撃されたこの変事は、自殺ではないかもしれない。
大河原氏と武彦、そして警察は殺人の方面で捜査を進める。
しかし、第一の容疑者と目されていた村越までもが変死を遂げる。
一見すると密室での拳銃自殺のようだが、どうも単純な自殺とは考えられない。
姫田と村越、二人の怪死について、捜査は難航する……。
そんな中、武彦は大河原氏の若い夫人、由美子に惹かれ、
ついに関係を持つに至っていた。
ある日、夫人の自室へ訪れた武彦は、彼女の日記帳を発見する。
そこには、夫人の秘めたる遊戯、そして事件への驚愕の推理が綴られていた。
その事実をどう受け止めてよいものか……。
困り果てた武彦は日記帳を手に、私立探偵・明智小五郎のもとへと向かう――。
難解なトリックと、動機に潜む狂気を探る、ミステリの傑作。
オーディオ版特典 絵図付
本オーディオブックには、『化人幻戯』に出てきます絵図をpdfにし、
より深く理解いただけるようになっております。
※PDFは音声とともに入っております。
江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ)
日本の推理小説家。1894年10月21日生まれ、三重県生まれ。筆名は、19世紀の米国の小説家エドガー・アラン・ポーに由来する。数々の職業遍歴を経て作家デビューを果たす。本格的な推理小説と並行して『怪人二十面相』、『少年探偵団』などの少年向けの推理小説なども多数手がける。代表作は『人間椅子』、『黒蜥蜴』、『陰獣』など。1954年には乱歩の寄付を基金として、後進の推理小説作家育成のための「江戸川乱歩賞」が創設された。
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