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下落相場でも勝てるリスク管理のすすめ
2008年は、あらゆる意味で歴史的な暴落相場といってもいい年でした。 本来、トレーダーには、「今回だけは特別」という表現は許されないのかもしれませんが、私の周りにいるベテランのトレーダーの方たちでさえ、「今回だけは今までと違った」という意見が多かったことからも、今年の相場の凄まじさがうかがえます。 今回が特別だったかどうかはともかくとして、少なくともいえることは、たとえどんな相場であったとしても、一度起こってしまえば「過去に起こった事実」としてデータに蓄積されるということです。 すでに起こってしまったことをリセットすることはできませんが、その経験を今後の将来に生かすことは可能です。とくにシステムトレードにおいては、過去に起こった事実だけが利益をあげるために必要なデータとなるため、今回の経験から「どのようにすれば勝つことができたか(利益をあげることができたか)」を考察するのは重要であるといえます。 そこで、実際に今年の相場でどのようにすれば勝つことができたか(あるいは損をせずに済んだか)を考えてみることにしましょう。
今現在、皆さんがトレードしている商品(市場)によっても対処法が若干異なりますが、ここでは仮に個別株を中心にトレードしているものとします。 デイトレードであれば、日中の値動きだけでトレードを行なうので、そもそも上昇相場であるか下落相場であるかはほとんど関係がありません。むしろ、ボラティリティの大きさのほうが重要といえるでしょう。 しかしながらデイトレードとなると、専業のトレーダーの方ならともかく、日中に仕事を持っているサラリーマンの方々は実践したくてもその時間がありませんので、必然的に2番目にあげた「ヘッジを使ったトレード」以外に選択肢はなくなります。 ヘッジを使ったトレードというと誤解を招く恐れがあるため少し補足しておくと、ここでは必ずしもヘッジすることを表すのではなく、あくまでも「ロング(買い)」と「ショート(売り)」の両方を使ったトレードを実践することをいいます。つまり、ロングとショートのポジションを同時に持つことだけでなく、相場の局面によってロングとショートを交互に建てることも含むものとします。 ひとつ簡単な例をあげましょう。 たとえば、ある単純なブレイクアウト系のルールで日経225先物をトレードした場合、下記の図のような資産曲線になります。
図の検証に用いたルールは、 にもかかわらず、一部の年を除いて資産はそれなりに右肩上がりの曲線を描いています。
このルールは単体で使えるほど安定したものではありませんが、ここでお伝えしたいことは、ロングとショートを併用することによって、成績が相場の状況に左右される可能性を軽減できるということです。 上記の例は日経225先物単体によるものですが、日経225先物を個別株のヘッジとして用いる方法もあります。 基本的に個別株はロング(買い)側に有利なバイアスがかかっているため、ショート(売り)による利益があげづらいという欠点があります。しかし、日経225先物ではショートでもロングと同等以上に利益をあげることが可能なため、個別株のヘッジとして最適なのです。 下記の図は先ほどとまったく同じルールでトレードした場合の検証結果ですが、今度はロング(140日高値ブレイク)は行なわずにショート(70日安値ブレイク)のみでトレードを行なったものです。
ざっとみた傾向としては、下落相場では概ね利益をあげていることがわかります。また、必ずしも下落相場でしか勝てないということではなく、トータルでも利益になっていることは非常に重要です。つまり、個別株と併用することで、下落相場における損失を大幅にヘッジしつつ、上昇相場でも利益をあげる可能性があるわけです。 トレードにおいては、今後の相場が上昇するか下落するかに意識が向きがちですが、どちらに動いても利益をあげることのできるスタンスを確立しておくことも大切ではないでしょうか。 「投資戦略フェア2009」では、個別株の逆張りを例にしたリスク管理に重点をおいてお話しさせていただきますが、時間があればヘッジに関するお話にも触れさせていただければと考えています。
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